マウンドに散った天才投手
松永多佳倫(まつながたかりん)氏による一冊で、野球界に閃光のごとく強烈な足跡を残し、瞬く間に消えていった伊藤智仁、近藤真市、上原晃、石井弘寿、森田幸一、田村勤、盛田幸妃、七人の壮絶な過去と第二の人生を描いたノンフィクション作品です。
特にプロ野球史上最高投手との呼び声も高い伊藤智仁にスポットが当てられた構成となっているため、少年時代、母親の影響でヤクルトスワローズの試合ばかり見ていたわたしには、感慨深く読むことができました。
読んで驚きだったのは、伊藤智仁はルーキーイヤーの年に怪我した右肘ではなく、2年目のキャンプ中に負傷した右肩が選手としての致命傷になったということ。
それもフィジカルトレーニングの意識が希薄で起こしてしまった故障だっただけに、伊藤智仁本人も、
「肘のリハビリはかなりやっていたんですけど、当時肩のエクササイズ、リハビリがあまり伝わっていなくて、肩を休みっぱなしにしてたんです。今まで半年間も肩を休ませたことがなかったですから。本来なら投げながら筋肉ができていたのを、肘のリハビリばかりしていたので肩のほうを疎かにしてしまったんです。二年目のキャンプ、肘の状態がよかったので、肩もできていないのに調整を早めすぎて、パーンとやってしまって・・・・・・」
と、悔やんでも悔やみきれない当時の様子を語っています。
結局、伊藤智仁の肩の怪我は癒えることなく悪化の一途をたどり、2003年に引退。現在はヤクルトの1軍投手コーチを務めています。
それにしても、伝説の対巨人の初陣は凄まじかったなあと改めて思い出します。9回までに16奪三振を奪っておきながらも、篠塚和典に浴びた逆転ホームラン・・・・・・ファンからすると伊藤智仁は儚いってところも、魅力ではあるんですけどねえ・・・・・・。
ちなみに下の動画は「怒り新党」で伊藤智仁を紹介したVTRです。この動画、伊藤智仁ファンなら涙ものの大傑作です。拝見された方も多いのではないでしょうか。
伊藤智仁ともう一人、印象的だったのは脳腫瘍から奇跡のカムバックを果たした盛田幸妃です。盛田の何がそんなにも印象的かというと、酒にまつわる話がとにかく面白い! これぞプロ野球選手っていう感じの豪快な話が多数出てきます。
『マウンドに散った天才投手』はプロ野球ファンなら必読の一冊だと思います。ぜひ読んでほしいです。
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