やはりこの話題は書かないわけにはいきません。
侍ジャパン、WBCの準決勝、3対1でプエルトリコに敗北。象徴的なシーンとして、8回裏に内川聖一選手のダブルスチール失敗の話題がテレビやネットで取りざたされています。
あのスチールは確かに内川選手のミスですが、この試合の彼の活躍は目を見張るものがありましたし、彼がいなければ日本ラウンドすら突破できなかったと思っています。
日本ラウンドのMVPは井端選手で文句無しですが、次点は内川選手というのも文句無しでしょう。前回のWBCの活躍も含め、内川選手はWBCの申し子だと思います。
侍ジャパンの敗北ですが、ダブルスチール失敗も攻めた結果のこと。無謀といえばそれまでですが、あの日のプエルトリコ投手陣の出来からするとそれぐらいしないと追いつけないと判断したんだと思います。最後まで勝負を捨てずに攻める姿勢を崩さなかった侍ジャパンの姿は、わたしにはとても立派に見えました。負けてあっぱれと言ってやりたいです。
さて、今回のWBCを見ていて、日本野球にもJUDOシンドローム(わたしの造語です)を感じてしまいました。暴力問題というわけではないので誤解の無いように(笑)。
日本柔道は2004年のアテネ五輪以降、国際試合でなかなか優勝すること、つまり勝ちづらくなってきました。それは日本柔道が弱くなったのではなく、世界のJUDOのレベルが急速に上がったからだと考えられています。
なぜか? それは2000年代初頭に起こった世界的変革に一因があると言われています。そう、インターネットの爆発的普及です。それまでごく一部でしか行われていなかったパソコン通信が、各世帯レベルまで敷居が下げられ、その気になれば世界中から情報が集められるようになりました。
特にYouTubeなどの動画共有サイトの貢献は大きく、それまで貴重だったビデオ資料が誰でも容易に閲覧できることになり、世界中のJUDO選手のレベルをグッと押し上げることになったのです。その結果、技数は少ないものの、キレッキレの得意技で勝負していた日本の柔道選手たちは、技に入るタイミングを潰され、あっけなく負けることが増えてしまったのです。
今度、柔道の国際大会を見てみれば、日本選手の技数の少なさがよくわかると思います。この辺の課題は、いまだに解消されていないとわたしは思って見ています。
今回のWBCを思い出せば、日本ラウンドの予選から、簡単な試合がほとんどありませんでした。ブラジル、台湾戦はまさに薄氷を踏むかのごとく、ギリギリの勝利であったといえると思います。ちなみにキューバには完敗でした。
メジャーリーガーはいなかったものの、侍ジャパンのメンバーを見れば、明らかに日本球界の最高峰が集結しています。その選手たちをもってしても、格下と思われていたブラジルや台湾を圧倒することができませんでした。コンディションもあったでしょうが、一番の理由はまさしくJUDOシンドローム、世界のベースボールのレベルが上がったからだと確信しています。
端的な出来事として、韓国の予選敗退もあったと思います。日本も韓国も今回のWBCで苦戦した理由はJUDOシンドロームひとつではありませんが、大きな理由のひとつでもありました。
しかし、野球が世界的スポーツになったのだとも言えそうです。特にオランダ、イタリアなどヨーロッパ勢の躍進は目を見張るものがあります。特定の国だけが強いスポーツなど見ていて面白くもなんともありません。スポーツはどっちが勝つかわからないハラハラ感があるから面白く、スポーツ選手はそういう勝負の世界に生きているからこそ尊いのだと思うのです。