一緒に語ろう! ~あるテーマを語り尽くす座談会~

第38回 お刺し身を語る ~旨味、風味、歯ごたえの三重奏~

  • 司会:友人・小野寺
  • 論客:佐藤 オキアミ、オダ マルソウダ
  • 収録:2015年5月某日 横浜市戸塚区・オダ マルソウダ実家にて収録

深海魚のお刺し身盛り合わせ

魚の生食=刺し身、日本人が世界に誇る特異な美味である。新鮮な魚を捌き、ひと口大の切り身にしただけの単純な料理ではあるが、魚の持ち味を100%引き出す素晴らしい調理法であり、盛り付けも含めて決して簡単ではないため、調理した人間の腕が試される難しさがある。
したがって、日本料理で評価される魚は刺し身にしてうまいものがほとんどであり、春はマダイやアオリイカ、夏はイサキやカンパチ、スズキ、秋はカツオ、冬はマグロやブリ、ヒラメといった魚が人気を集める。これらの魚は刺し身にしてこそ最高の旨味を味わうことができ、また、これらの魚の刺し身は、究極の美味だと言い張れるだけのうまさがある。

――今回は「お刺し身」について語ってもらいます。皆さんはさぞやおいしいお刺し身を食べているかと思います。
オダ 嫌味を言うねえ。
――ちなみに今日の宴会の刺し身はマハタとアラです。オキアミ氏に造ってもらいました。オダさん、どうです?
オダ いや、うまいんだよなあ。これだけ大胆に切り分けた刺し身は外じゃなかなか食べられないね。
佐藤 魚屋で買った丸の魚は漁獲されてからけっこう日が経っているから、身がやわらかく熟成されているのよ。だから薄く切っちゃうと、旨味も食感もしっかり味わえないと思ってね。それにどっちの魚も型が小さいから、大きめに造ったほうが絶対においしい。
――実際かなりうまいです。魚屋で買ったハタがこんなにおいしいとは思いませんでした。
オダ オキアミが予想以上に包丁がうまいんで驚いた。サウスポー用の出刃を買ったばかりだし、参考になったよ。
佐藤 いやいや、褒めすぎだよ~。ま、料理するの好きだしね。それに釣り人なんだからお刺し身ぐらいは造れるようになるのは義務かなと。さすがにプロみたいにはいかないけれど、そこそこはね。
オダ 魚を買ってきて練習したの?
佐藤 残念ながら、そうなんだよお(苦笑)。まともに魚が釣れないからねえ。あとはユーチューブにアップされている魚を捌く動画を穴が空くほど見てね。職人の世界は見て覚えるっていうけれど、確かに目に焼き付けるほどうまい人の手捌きを見ると、自分も自然と捌けるようになってくるよ。前も言わなかったっけ?
――第35回「釣り人よ、包丁を握れ! ~剣は竿より強し!~」で語っていますね。
オダ じゃあ、今回のテーマはかぶっちゃうんじゃない?
佐藤 でもあの時は魚料理を作れるようにしようぜっていう話だった。
――そうです。今回は刺し身だけに絞ってということです。
佐藤 まあ、刺し身って豪華な料理だよね。だって、魚のいい部分しかお刺し身にならないんだから。お刺し身にすると、本来は食べられる部分まで贅沢にトリミングしちゃうんだから。
オダ そうだよねえ~、生で食べてもやわらかくておいしい部分っていうか、筋張った部分や骨が当たる部分は取っちゃうんだもんね。
佐藤 煮付けや塩焼きにすれば、骨以外は全部食べられるんだから。そこをあえて刺し身で食べる豪華さったらないよ。
オダ そして一番うまい、やっぱり。冬は鍋や煮付けが特別おいしく感じるけれど、でも刺し身は別格。特別感があるし、居酒屋の刺し身が予想外に上質だと盛り上がるもの。
――でも多くの大手チェーンはひどいですよねえ。
オダ メニューはサーモン、ハマチ、イカ、タコ、マグロぐらいかな? どうにかなんないかね、ありゃ。
佐藤 そうだねえ。後は秋になるとサンマぐらいはあったと思うけれど。せっかく刺し身が一番うまい夏にいい魚が出ないんだよ。
オダ そう! 夏は白身魚がうまい季節だから、和民なんかでもうまい白身を安く出せればすぐに経営は上向くと思うよ。
佐藤 それに夏は冷たい刺し身がことのほかおいしく感じる。割烹料理屋なんかにいくとさ、かき氷のように細かい氷の上に乗せられていたりね。お刺し身と冷酒なんて最強クラスのうまさだよ。
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――やっぱり魚は旬ですよねえ。季節ごとの旬の魚といえばなんでしょう?
オダ う~ん・・・・・・。
佐藤 春はマダイにアオリイカ、夏はイサキやカワハギ、秋はサバやカツオ、冬はマグロにヒラメ・・・・・ぐらいかなあ。
オダ でもさ、マグロやカツオ、ブリなんかは旬がカチッと決まっているけれど、例えばイサキなんて夏でも冬でもうまいからねえ。
佐藤 そうそう、意外にさ、魚って旬があるようでいて、大体の魚がいつ喰ってもうまいんだよ。旬じゃないと真価の出ない魚もあるけれど、大体の魚は鮮度がよければ刺し身はうまいよ。
オダ やっぱり刺し身は、熟成させるよりも獲れたてのほうがうまいかな?
佐藤 オレはそう思う。今日の刺し身もやっぱり鮮度的には物足りないよ。刺し身はやっぱり、エッジが立ってこそだと思う。
――確かに切り口がピンとしている刺し身はうまそうですね。
佐藤 でしょう? 経験上、刺し身は魚を釣ったその日に食べるか、翌日ぐらいまでが一番おいしいと思う。鮮度の良さを何より感じますよ。
オダ でもよく言うじゃない、熟成させたほうがおいしいって。
――前にテレビで見たんですけど、とあるお寿司屋さんはホンマグロの大トロ切り身を10日間寝かしてましたよ。
佐藤 10日間も!? オレさ、最近、熟成ってのに懐疑的になってきて。肉はともかく魚の場合ね。
――それまたどうしてですか?
佐藤 例えばアジなんかの小魚は、やっぱり獲れたて新鮮なほうが明らかにうまいのよ。なんなら活き造りが最高なぐらい。
オダ それは小魚だからじゃない?
佐藤 いや、もちろんそうだよ。でもね、熟成させるほどに食感が失われてフニャッとするし、確かに味は濃くなるんだろうけれど、その分、魚臭さも強くなると思うんだよ。
オダ ああ、確かに。今日の刺し身だって、クサイわけじゃないけれど、とれっとれの新鮮な刺し身とは風味が違うね。
佐藤 そうなんですよ。アジなんかしっかり締めて血抜きをしても、刺し身で食べるのなら二日が限度かな。大きな魚になればもう少し、身ダレは遅いんだろうけど。
オダ 刺し身らしい歯ごたえ、刺し身らしい風味ってあるよね。熟成させると、旨味だけは増えるかもしれないけど、他はどうなんだろってことだよね。
――でもそれは、最近の熟成肉ブームとは逆の考え方ですね。
佐藤 いや、だって肉は魚よりも硬いじゃない? それに火を通せば身が締まって余計に硬くなるわけだから、ギリギリまで熟成させてやわらかくしたほうがうまいってのはわかるよ。でも、魚は基本的にやわらかいから。
――魚の中でも身の硬いフグは身欠を1~2日寝かせてから刺し身にするっていいますしね。じゃあ、釣ったらどれぐらいで刺し身にしたほうがいいと思いますか?
佐藤 小魚は釣った当日が翌日、それなりの型なら当日から翌々日ぐらいじゃない? 刺し身は、旨味、風味、歯ごたえの三重奏を楽しむ料理だと定義するなら。フグやマグロは扱ったことがないからわからないけど。でも熟成を完全に否定しているわけでもないのよ。
オダ なんでよ? たった今、新鮮なほうがうまいっていったじゃない。
佐藤 家庭レベルではってことだよ。プロはオレなんかとは技術が違うし、冷蔵方法だって次元が違うでしょ。数日寝かせても、当然、風味も食感も失わないからこそ、あえて寝かせて旨味を引き出しているんじゃない?
――そりゃ、そうですよね。素人レベルなわけはないですよ。
佐藤 なんか素人呼ばわりされるのはちょいと勘に障るけれども(笑)。
オダ いや、プロレベルの包丁使いではなかったけれど、素人ってほど下手ではなかったよ。セミプロぐらいじゃない(笑)。
――ダッハッハッ、そりゃすみません。では最後に、お刺し身にして特別おいしいと思う魚を教えてください。まずはオダさん。
オダ オレ? う~ん、なんたって締め鯖だねえ。それにイサキ、あとはマグロが好き。
佐藤 ソウダガツオは?
オダ おお、忘れてた(笑)。でもペンネームにしているマルソウダよりかはヒラソウダのほうがやっぱりいいよね。あ、肝付きでカワハギも捨てがたい。
――オキアミさんは?
佐藤 オレはカツオが一番。カツオのタタキだけはお腹いっぱいになるまでずっと食べられる。
オダ 確かにカツオってすんげえいっぱい食えるわ。逆にさっぱりしている白身はそんなに食べられないから不思議。
佐藤 あとはオレもマグロだね、それと青物はブリとカンパチ。白身はホウボウとマコガレイがうまいと思う。光物はアジ、サバ、イワシ、コハダも大好き。カツオが頭抜けているけれど、あとは順位を付けられないよ。
――ちなみにわたしはヒラメのエンガワが一番だと思うんですが。
オダ ああ、確かにあれも最高にうまいなあ。歯ごたえよくシコシコしているのに脂が乗っていて。たまんないねえ。
佐藤 やっぱり刺し身は魚料理の王様だね。多くの魚は生で食べるのがやっぱり一番おいしいもの。こんなにも魚釣りに興じるのはうまい刺し身を食べるためってことだよ。
オダ そら、名言だねえ。さすが『名言、集めました』主宰者。
佐藤 ああ、オレの言葉はいつも名言に溢れているのさ。
――迷言の間違いでは?

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