ひと口に釣りバリといっても、大きさや形状、カラーは様々であり、狙う魚によって使い分けるほか、状況によってハリをうまくマネージメントできれば、当然よい釣果を上げることができる。しかし、言葉ほど簡単ではなく、これだという答えのない奥深い世界なのだ。
ハリを大きく分ければ軸長バリと普通軸バリに分けることができ、長軸バリは虫エサを使った投げ釣りやタチウオ釣りなどに好んで使われる。普通軸バリの種類は多く、チヌバリやグレバリ、セイゴバリ、マダイバリ、ムツバリなどが代表的。沖、陸っぱり問わず多用する。
――ずいぶんと、久しぶりの座談会です。今回の『一緒に語ろう!』のテーマは“釣れるハリと釣れないハリについて”です。 | |
オダ | 久しぶりの座談会でずいぶん難しいテーマを持ってきもんだね。でも前にやらなかったっけ? |
――前にやったのは「第23回 魚を掛けるために重要なこと ~ハリ、エサ、ハリス~」。ハリだけではなくて、魚を掛けるという漠然としたテーマでした。 | |
佐藤 | ハリだけにテーマを絞られるとかえって難しいよね。でもオレは個人的に、一番大切な釣り具がハリだと思っているし、あとは付けエサだね。 |
オダ | あのさ、マダイ釣りってハリがいろいろあって面白いよね。船やカゴ釣りだとマダイバリを使うし、ブッコミ釣りではサーフ真鯛とかコウジマダイなんかだよね。あ、クロダイもだ。ハリに付けるエサによって形状がいろいろだよね。 |
佐藤 | ハリと付けエサの関係は無視できないよね。例えば、付けエサにイソメ類を使うならハリは長軸系統が基本だし、オキアミならフトコロ深めの普通軸の丸型ハリを使うのが基本だよね。付けエサに合ったハリを使うと、エサ持ちが良くなるから効果的に魚にアピールできる。 |
――虫エサなら流線バリ、オキアミならチヌバリやグレバリを使うことが多いですね。 | |
オダ | ハリの形状は、長軸の流線系と普通軸のチヌバリ系が基本となるんだね。あとはハリ先が立っているか、ネムっているかというのも大きな特徴といえそうだけど、ムツバリなんて極端にハリ先がネムっていて面白いよ。でもどうしてハリ先をあんなにネムらせるの? |
佐藤 | まずは根掛かりしにくい、ということだよね。ハリ先が立っていると根に引っかかりやすくて、磯でのブッコミ釣りだとかをするなら、ある程度ハリ先がネムっているハリを使わないとキツイ。じゃないと、オモリは根掛かるはハリは根掛かるはで釣りにならないよね。 |
――根魚用を謳っているハリはことごとくネムっていますよね。 | |
佐藤 | うん、やっぱり根魚系にはネムリバリが基本だと思う。あとは、魚のカンヌキにハリを確実に掛けたい時にムツバリ系統が使われるよね。 |
オダ | でもさ、どうしてわざわざムツバリまで使って、カンヌキにハリを掛けたいわけ? |
佐藤 | 例えばマグロなんかだと、引きが強烈なうえに歯も強いから、ハリをカンヌキに掛けないとハリスを切られてしまうことが多い。尾長グレもそうだよね。尾長用のグレバリはムツバリ以上にネムっている物もある。 |
オダ | そういえば村越正海さんが、エビングに使うハリはネムリバリであることが極めて重要って書いてたな。 |
――わたしは以前、青森県・大間のマグロ漁師がネムリバリを使っていたことを覚えています。 | |
オダ | 根掛かりに強くてカンヌキに掛かりやすいならムツバリが最強なんじゃない? |
佐藤 | いやでもさ、ネムリバリだとタイミングよくアワセが決まらないとスッポ抜けるし、基本的に向こうアワセではハリが掛からないから、エサだけ持って行かれることも多いよね。だからムツバリを使ってたら、鬼アワセが基本だよね。 |
オダ | 前にカゴ釣りで竿をグワングワンあおって鬼アワセを入れてたよね? あの時はムツバリを使ってたんだ・・・・・・でもスッポ抜けてなかった? |
佐藤 | かなりスッポ抜けたよ(笑)。ソウダガツオはさ、エサを一気に吸い込みやがるから高確率でハリを飲まれるじゃない!? だからわざわざムツバリを使ったのにアワセを入れると、スッポンスッポンとスッポ抜けちゃってさあ。それでハリスがグチャグチャになったタイミングでチヌバリに交換してみたら、まあ魚が掛かる掛かる(笑)。 |
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――ハリ先の立ったチヌバリやマダイバリの掛かり具合って凄いですよね。魚がハリに触った瞬間にもう掛かっているというか。 | |
オダ | オレはチヌバリが一番好きだな。あとはセイゴバリ。このふたつで大体事足りてしまう。ま、最近はほとんど両軸遠投カゴ釣りしかしないから(笑)。 |
佐藤 | 前にね、メーカー契約のプロと話をしたことがあって、その人が言うにはさ、基本的なことだけどメジナならグレバリ、クロダイならチヌバリ、マダイならマダイバリを使うことが重要っていってたよ。ハリメーカーが一番、魚とハリの関係について研究しているわけで、やっぱり理に適った形状や大きさをしているわけなのさ。 |
――その大きさについて、デカバリとチビバリのどっちが好きですか? | |
佐藤 | オレは基本的にはデカバリが好きだな。口に掛かりやすいし、バレにくいよ。 |
オダ | 大きいハリのほうがバレにくいの? |
佐藤 | 断然バレにくいよ。ハリが小さいと力を受け止めきれなくて、伸びるし、口切れもしやすいよ。前にさ、外房の港で、足下で30cmぐらいのマアジがバッシバシ釣れたことがあってさ。最初はイワシ&小アジ用のサビキでやってたんだけど、掛かりはするんだけどバラシが頻発してね。だから、遠投サビキ用のデカバリサビキに交換したら、ヒット数は減ったけどその分かなりの高確率で釣り上げることができたよ。 |
オダ | へ~。だけどさ、ハリはチビバリを使って、飲ませて確実に釣るんだって人もいない? 特にカゴ釣り師にそういった人が多いと思うよ。 |
――確かにグレバリやマスバリを好む人は多いですよね。イサキやアジを狙う場合は、できるだけ小さなハリを使って飲ませるっていう。 | |
佐藤 | イサキやアジは口が切れやすいからハリを飲ませるのは有効だけど、でも逆に飲まれなかったらバラす確立は増えると思うよ。だから、オレはチヌバリ 4号ぐらいの大きさが、ちょうどいいんじゃないのかなと思うけどね。 |
オダ | オレは回遊魚やマダイを狙うときはデカバリ、磯に作られた堤防なんかで竿を出すときはチビバリを使うようにしているよ。デカバリは確かに口に掛かりやすいけど、せっかく磯で竿を出すならカワハギを狙いたいからね。カワハギはデカバリじゃあ掛からないからさ。 |
――形状、大きさと話してきましたが、カラーについてはどう思います? グレバリなんかは、かなりのカラーバリエーションですよね。 | |
オダ | オレは白っていうの? 普通の銀色ばっかり使ってる。あとはオキアミカラーと金ぐらいかな。 |
佐藤 | オレも普通の銀色系を使うことが多いかな。色による釣果の差は正直あまり実感ないけどさ、魚じゃないけど、マルイカ釣りなんかはスッテのカラーが重要なわけじゃない? アジやイワシのサビキ釣りも、釣れる色と釣れない色があるよね。だから、まったく関係ないってことはないと思うよ。 |
――魚が興味を持ちやすい色、もしくは警戒心を与えづらい色ってのはあるかもしれませんね。アイナメには赤が効くとよく言われますしね。 | |
佐藤 | ああ、メジナやクロダイ、マダイは黄色を好むとかね。あ、そうそう、ケイムラって一時流行ったじゃない? でもさ、マダイなんかは紫外線を感知できないから無意味だってさ。ケイムラを感知できる魚とできない魚がいるらしいよ。だからさ、ケイムラ加工されたエサが売っているけど、ターゲットが紫外線を感知できるかどうかよく調べてから使ったほうがいいね。ケイムラ加工されているぶん、割高なんだからさ。 |
オダ | ワームを刺すフックは黒が多いじゃない? あれはなんでだろうね? |
佐藤 | ・・・・・・なんでだろうね? たまに赤とか茶色系も見かけるけどね。なんで? |
――いやあ、そこまで考えたことなかったですね。・・・・・・推測するに、ルアーフィッシングは、あくまでルアーが主役だから、ルアーのアピールを邪魔しない色が好まれるとか? | |
オダ | あ、きっとそれだ。ハリが派手だと、意図を持ってカラーリングしたワームを殺しちゃうんだ、きっと。 |
佐藤 | 確かにそれは説得力があるね。だから、そういうことでいいんじゃないでしょうか。 |
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――ずいぶんと投げやりですね(笑)。ということは、ハリの色は何色でもいいってことになりませんか? | |
佐藤 | いや、まあ、そういうことでもないだろうけど、グレバリはあれだけカラーが豊富ってことは、少なくともメジナはハリのカラーで釣果が変わるんだと思うよ。だってほかは、白か金か赤ぐらいしかないんだから。 |
オダ | だけどさ、このカラーを使えば絶対に魚が釣れる!ってものがあったらいいよね。ま、そんなのはないから、ハリの道は一日にしてならずなんだね。 |
佐藤 | アッハッハッハ、「ハリの道は一日にしてならず」が今回の結論だね。結論が出たんだから今日はもうこんなところで。そろそろ本格的に酒が飲みたいよ。 |
――しょうがない人たちですね、まったく! |