首を折って活き締めにされたゴマサバ。釣った魚を鮮度よく持ち帰るには、締め方と保存法が大事。活き締めにして即死させつつ血抜きをしたうえで、低温保存をすると、魚の鮮度を保てるばかりか、釣りたてよりも断然味わいがよくなる。
魚によって締め方は異なるが、基本はナイフを魚のエラに挿入し、太い血管を断ち切ったうえで、ナイフの切っ先で延髄を断ち切る。ちゃんと締めることができれば、魚は動かなくなる。
――今回のテーマは「釣った魚の締め方と保存法」についてです。なぜこのテーマをやっていなかったんだと、お二人も思われるでしょうが。 | |
佐藤 | いや、テーマを決めるのは君の仕事なんだから、なぜ?というよりも、君の単なるど忘れでしょ? |
オダ | むしろ今更感があるというかね。魚の締め方や保存法は今まで多少は喋ってるんじゃない? |
――いえいえ、話の端々に出ただけなので、「これが正解だ!」と熱弁してもらえれば。 | |
佐藤 | いやいや、この座談会は責任取らないけど好き勝手話をするぜっていうのがコンセプトなんだから。正解は導けないよ。 |
――まあまあ、とにかく魚の締め方から語ってくださいよ。 | |
佐藤 | ふ~ん、まあいいけど。まずさ、どうして魚を締めるかだよね。 |
オダ | おいしく食べるためでしょ? |
佐藤 | いや、まあ、そうなんだけどさ、魚を締めるとどうしておいしく食べられるようになるかってことだよね。魚を締めるとひと口に言っても、目的はふたつあってさ。まずは、血抜きだよね。もうひとつは即死させるってことだよね。 |
オダ | ソウダガツオなんか締めるとさ、血がドババーッて出てくるよね。 |
佐藤 | うん、魚って意外に血の気の多い動物でさ、血を抜いてやらないと血生臭くなっちゃうんですよ。 |
オダ | でもあなた、ホンガツオは血がうまいと言ってるじゃない? |
佐藤 | いやいや、ホンガツオのように血の風味がいい魚もいることはいるけど、そのことと血抜きをしない理由にはならないよ。血を抜いたところで、風味というのは身に染み付いているんだしさ。でも確かに、あえて血抜きをしないって人もいるわけさ。オレが前に聞いたことあるのは、尾長メジナ(クロメジナ)は血がうまいから、血抜きをしないほうがいいと。オレは血抜きした尾長メジナしか食べたことがないからなんともいえないけどさ、血抜きをしないという意見があることも確かだよ。 |
オダ | へー、それは面白いね。メジナって締めるもんだと思ってたし。 |
佐藤 | だから普通は締めるのさ。血を抜くと、さっきも言ったけど血生臭さを防げるしさ、保存性も高まるから、やっぱり血は抜かなきゃ基本的にはダメなわけだよ。 |
――魚の血はどうやって抜きますか? | |
佐藤 | 魚によってやり方は違うけど、基本的には魚のエラにナイフを刺し入れて、太い血管を切断する。エラと体を切り離すイメージかな。エラそのものを切断しても血がドバーッと出るね。 |
オダ | ソウダガツオやサバ、アジなんかは首をバッキリ折っちゃえば、血抜きと締めが同時にできるよね。 |
佐藤 | そう、血抜きと締めを同時に行うのが大切でさ、ナイフでエラを切断したら終わりじゃなくて、ナイフをエラに挿入したまま、ナイフの先で魚の延髄を切断して即死させる。まあ、これは慣れないとなかなか難しいけど、何度かやってると出来るようになるよ。 |
――延髄を切断すると、魚の表情が明らかに変わりますよね。瞳孔が開くというか。 | |
佐藤 | そうだね。うまく延髄を切断できれば魚の動きが止まるから大人しくなるよ。あとは尾の付け根を切るのも有効だというよね。ただオレはそこまではしないかな。フィッシングナイフだと魚のウロコはなかなか切れないんですよ。 |
オダ | でもできればやったほうがいい。それで海水につければ血が流れていくね。回遊魚系はバケツが真っ赤になるよ。 |
佐藤 | エラと延髄を切断した魚、もしくは首をバッキリと折った魚を頭のほうから海水の入ったバケツに入れることがコツだね。それにマダイやメジナの場合は、海水に漬けながら体を折り曲げるようにしてやると、より血が流れやすくなるよ。 |
――延髄を切断しても心臓は動いているから、血が流れるんですよね。 | |
オダ | でもさ、前に、エラをむしりとるだけで血抜きをしていた人をみたよ。 |
佐藤 | う~ん、血抜きにはなるだろうけど、結局はそれは苦悶死だからなあ。何もしないよりかはましだろうけど、活き締めにしたことにはならないよね。 |
――即死させることが重要なんですね。 | |
佐藤 | 大暴れさせたり、苦悶状態を長引かせると、体から旨味成分が損なわれる原因になるというよね。これは魚だけじゃなくて牛や豚、鶏なんかも同じ。ストレスをかけないよう即死させる。 |
オダ | あとさ、活き締めにした上で、脊椎に針金を差し入れて神経締めにするといいと聞くじゃない? あれはどうなのかな? |
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――釣り具屋にもルミカの「神経絞めセット」など、神経締め用の針金が売ってますね。 | |
佐藤 | オレが聞いたところだと、マグロなどの大型魚には有効だけど、それ以下の魚は逆に身の弾力を失うだけって聞いたかな。 |
――有効だとも聞きますよね? | |
佐藤 | 聞く。ただそこまではやる必要はないんじゃないかな? 神経締めよりも、しっかりと活き締めすることに注力したほうがおいしい魚が食べられるよ、たぶんね。 |
――おさらいですけど、活き締めにする目的は、1.血抜きをして血生臭さを取り保存性を高める、2.即死させることで身の旨味成分を保つ、ということでいいですか? | |
佐藤 | そうですね。オレはその2つの目的のために活き締めにしているよ。 |
オダ | あとは魚にもよるけど、赤身の魚は頭とエラ、内臓を除去しておくといいと思うよ。内臓とエラが付いていると、血のニオイが全体に回っちゃうからね。 |
――わかりました。次に、釣った魚の保存法はどうしています? | |
オダ | ペットボトル氷は必需品だよね。それをクーラーボックスに入れてできるだけ釣り場に持ち込むことが肝心。そこに海水を入れて水氷を作る。 |
佐藤 | 締めた魚をそこにドボンだよね。小魚だったらそのまま入れて、氷締めにしてもいいしさ。オレは締めるけど。 |
――氷締めも一応は締めなんですよね? | |
オダ | というか、活き締めのほうが特殊だよね。昔から、まとまって取れる小魚は、水氷に入れて締めつつ鮮度を保つのが普通ですよ。 |
佐藤 | でもオレは、イワシやアジだったら氷締めする前に、魚がハリに付いた状態のまま、パキッと首を折ってやることをすすめるかな。暴れなくなるからハリが取りやすくなるし、活き締めにもなるしね。 |
――締めた魚は直接水氷に入れると味が落ちるといいますよね? | |
佐藤 | う~ん、確かにそれは聞くけどねえ。プロは締めて血抜きをした魚をビニールでくるんで、氷にうずめるみたいだけどさ、そんな豊富には氷を釣り場に運べませんわな。限られた氷の量で鮮度を保つなら、やっぱり水氷が一番だと思うし、気になるなら魚をビニールにくるんで水氷に入れればいいと思うけど、でもヒレなんかでビニールが破けて、結局は同じになることも多いし。 |
オダ | オレ、活き締めにして頭とエラ、内臓も除去したソウダガツオを水氷にして持ち帰るけどさ、味が落ちてるとは感じないかな。それよりかは、ちゃんと締めているのに、水氷にして持って帰ると、クーラーボックス内は真っ赤になってるもんね。まだ、こんなに血が残ってたかって!? 割烹や寿司屋じゃなければ、そこまでは気にしなくても大丈夫じゃないかな? 家に持って帰れば冷蔵庫に入れるんだしね。 |
――ちなみにお二人はクーラーボックスのおすすめはありますか? | |
佐藤 | やっぱり釣り具メーカーのクーラーボックスがいいよね。魚を入れやすい形状というのかな。横長で、ある程度の大きさの魚だったらスッポリと納まるように設計されているよね。 |
オダ | カゴ釣り師ってさ、なぜかシマノのスペーザライトを愛用している人って多くない? オレもそうだしオキアミもだよね? |
佐藤 | うん。知っているカゴ釣り師もスペーザライトを始めとしたスペーザシリーズを使っている人が多いかな。たぶん値段も安いし、形状も使いやすいし、といった理由だろうね。 |
――真空クーラーを使っている人はいないですか? | |
オダ | クーラーボックスにそこまでお金は掛けられないかなあ。その代わりできるだけペットボトル氷を持ち込む。 |
佐藤 | 夏は冷凍庫の一室すべてを使ってペットボトル氷を作ってるよ。活き締めにすることも大切だけど、低温を保つことはそれ以上に大切だからね。 |
――保存法の結論は、とにかくクーラーボックスにたくさんペットボトル氷を入れていけと(笑)。 | |
佐藤 | それで水氷よ! 活き締めにした魚を水氷に入れれば、釣り場でできる魚の締め方、保存法としては最高だと思いますよ。 |
――せっかく魚を釣ったなら、しっかり締めて鮮度良く持ち帰らないと損ですね! |
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