一緒に語ろう! ~あるテーマを語り尽くす座談会~

第29回 日本の捕鯨について ~まずは方針を決めよ!~

  • 司会:友人・小野寺
  • 論客:佐藤 オキアミ、オダ マルソウダ
  • 収録:2014年4月某日 神奈川県横浜市・戸塚駅・回転寿司たくみにて収録

とある鯨料理

日本の捕鯨文化は歴史的に非常に長く、縄文時代の遺跡からクジラの骨が出土し、奈良時代の文献にはすでにクジラが天皇に献上されたという記載がある。海に囲まれた国だけあって、早くからクジラを重要な水産資源として活用してきたのだ。
そのため、日本は世界でも類を見ないほど高度な鯨料理を構築しており、様々な部位の刺し身や湯ぶき、はりはり鍋、吸い物、焼き物、揚げ物、果てはベーコンなど、実に多彩なのである。
日本の食文化のクジラを守るには、政府が世界に対して明確に姿勢を示すことと、国民への啓蒙活動が必要なのである。

――今回はちょっと政治的色合いの強い「日本の捕鯨について」というテーマです。
オダ 色合いが強いというよりも、政治そのもので釣りとは関係ないよね?
――ま、でも海つながりですし、我々釣り人もなにかと南極にはお世話になってますからね。
佐藤 ナンキョクオキアミってこと?
――ま、そういうことです。だからたまには政治も語ろうじゃないかと。
オダ なんか最近、テーマ設定がむちゃくちゃになってきている気がするよね。
――とにかく今回のテーマは捕鯨でいきます。さる2014年3月31日、オーストラリアの提訴によって、国際司法裁判所が日本による南極海での調査捕鯨の実施を禁止する、という裁定がくだりました。率直にどう思います?
オダ まあ、調査捕鯨と言ってもね、目的のほとんどは食用なんだから、オーストラリアの言うことももっともだよね。
佐藤 あ、オレもそこは同意。そりゃ調査もしているだろうけど、日本人が捕鯨をする目的は明らかに食べるためなんだからさ。
――日本の捕鯨擁護論者がよく言うことに、科学的データに基づいてクジラを獲っているのだから、日本の捕鯨によってクジラが著しく頭数を減らすことはない、などと主張していることが多いと思います。
オダ それは日本の主張は筋が通ってると思うし、その科学的データをオーストラリア人だって否定はしないと思うよ。でもさ、彼らが問題にしているのは捕鯨そのもので、数が減るとか減らないとかは関係ないんだよ。
佐藤 オレもそう思うな。オーストラリアやニュージーランドからしたらさ、なにオレたちの海で捕鯨をしてやがんだ?ってことでしょ。
――いや、南極海は誰のものでもないので、日本が南極海で捕鯨を行っても問題はないんですよ。
佐藤 いやいや、そりゃ国際法的にはってことでしょ? オーストラリアは世界で一番南極に近い国なんだから(実際はチリが一番)、南極海なんてオーストラリア沖ぐらいに思っているはずだよ。だからオレたちの海でなに捕鯨しくさってんだって感覚なのは確実。
オダ 日本だってさ、東シナ海なんかで操業する中国の虎網船団に怒ってんじゃん? なにオレたちの海でやってくれてんだって。そりゃ一網打尽に魚を捕まえちゃう虎網と日本の捕鯨は違うけどさ、日本人が中国人に抱く感情と、オーストラリア人が日本人に抱く感情は本質的に同じだと思うよ。
――ではお二人は、捕鯨禁止を支持してらっしゃる?
オダ いや、全然。個人的にはガンガン獲って、居酒屋なんかで格安メニューで出回ってくれないかなと思っているよ。
佐藤 食感的には肉なんだけど、肉とは違うあの味わいは酒の肴に最高だよね。ホント、牛肉とマグロを合わせたようなさ、クジラはクジラのうまさがあるよね。オレもね、全然捕鯨反対じゃないんだよね。でもさ、今回の件に関してはね、オージーのほうが理論的だと思うのよ。
――日本政府は鯨肉は日本の大切な食文化だと主張していますよね。
佐藤 だからオージーからしたら「知るか!」って感じでしょ? オレらは食わねえんだから食うんじゃねえって。かわいそうじゃねえかって。
オダ ニュースで見たんだけど、中国は漢方薬で熊の胆汁を利用するんで、生きながらにして針で胆汁を採取するんだって。しかも、エサもほとんど与えず、せまいカゴで飼育しているんだって。そのニュースを聞くとさ、日本人も欧米人も「なんて残酷なことを!」って思うけど、中国人からしたら熊なんて漢方薬でしかないんだから、残酷って感覚はそもそも希薄で、例え残酷かもしれないけど、このやり方が最高の胆汁を採取する方法なんだから仕方ないって感覚だと思うんだよね。
佐藤 そうそう、日本人だって魚に対してはホントひどいことを平気でやるよね。活き造りや踊り食いだとかさ、後は地獄焼きなんて、熊の胆汁を生きながらに抜く中国人とやってることは変わらないよ。自分たちにとっては魚介は単なる食材だから、エビや貝が地獄焼きされても「新鮮でうまそ~♪」と思っちゃうけど、他国の人から見たら残酷ショーそのものでしょ。地獄焼きはともかくさ、欧米人にとってはクジラは犬猫と同じ愛玩動物なわけでしょ? 犬猫と同じクジラを殺して食うなんて野蛮人のすることだよね。オレだって、犬猫を殺して食う人見たら野蛮人だって思うもの。
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――でもそれは価値観の押し付けでは?
佐藤 いや、まったくその通りだよ。でも残念ながら、この世界は欧米人の価値観が基本的に正しいとされているわけでさ、それとは違う自分たちの価値観を、世界的に認めさせることは至難の業だよ。日本だって、さっきの熊の例みたいに、西洋の価値観と同調できる場合は平気で中国を叩いたりするんだから。
オダ だから日本のほうが捕鯨に対しては、欧米に対してよっぽど感情的になっていると思うよ。自分たちの文化や科学的データを主張するだけで、西洋人の倫理観を理解しようとしていないんだから。裁判は科学的データだけじゃあ勝てないよ。
佐藤 でもさ、欧米人の価値観ほど変化しやすいものはないよね。過去には鯨油の採取で殺戮の限りを尽くしたのに、現代はクジラは犬猫と同じ愛玩動物なんだから。日本人は、数百年間にもおよぶ間、クジラは食べ物であるという価値観を崩していないわけで。捕鯨に関して、歴史的にも筋が通っているのは日本であることは明白なんだけどな。
オダ でも欧米人の覇権主義的感覚だけは、変わらない価値観として今もあるよね。アジアの人間にとって我慢ならないと感じてしまうことも多いよ。それに、ディンゴとかいう野犬とか、カンガルーなんかの虐殺を続けるオージーには動物愛護は言われたくないよね。マジ呆れるし、都合のいい時だけ擦り寄ってくる感じが鼻につくよ、オレは。
――とはいえ、欧米人の価値観のせいで、このままでは日本の食文化のひとつが失われる事態になるかもしれません。
オダ それはしょうがないよね。だって、日本政府は商業捕鯨をしないってIWCの方針に従うことにしてるんだから。日本政府自らが、食鯨の文化を否定しているようなもんじゃない? それでいて都合が悪くなると、文化だ科学的データだとかいって捕鯨させろっていうんだから、反捕鯨国からしたら理解できないだろうね。
佐藤 日本人の批判の矛先が間違っているよね。捕鯨推進論者はさ、オージーどうこうよりも、まずは日本政府の方針を改めさせろって。欧米人から、世界一野蛮な国民とレッテルを貼られても、沿岸は当然、南極や北極の海でもクジラを殺さないと食鯨文化が守れないんだから。
――和歌山県太地町のイルカ漁を一方的に批判した『ザ・コーヴ』というドキュメンタリーがアカデミー賞を受賞したりしています。
佐藤 あれはもう、大きなお世話以外のなにものでもない。イルカ漁は日本沿岸部のことだし、イルカは捕鯨禁止の対象には含まれていないんだから。でもね、これは個人的な感想だけど、オレは漁師たちがイルカを締めている動画を見たけどね、確かに残酷だと思った。イルカを車で引きずったりするのはむごかったし、殺すときにノドをかっ切るとイルカは哺乳類だから吹き出す血の量が半端ない。イルカ漁をするにしても、やり方がもっとあるんじゃないかと思ってしまったよ。
オダ だから批判をされにくい環境づくりを行政がもっとするべきなんだよ。イルカ漁を守りたいといっても、文化を主張するだけで、批判をされないようにするための努力をしているとは言いがたい。
――締め方の工夫はしているようですけどね。
オダ 大事な文化だから守りたいと思うのなら、締め方だけじゃなくて、ほかにも考えうる最大限の努力はすべきだよ。さっきオキアミが言ったことが100%の事実なら、そりゃ反捕鯨論者から格好の批判材料にされちゃうわな。それとちょっと話が飛躍しちゃうけどね、仮に日本が欧米諸国から「魚食禁止」と通達されたらさ、たぶん第二次太平洋戦争が勃発すると思うね。魚を食べるために、魚食文化を守るために、誰だって銃を手に取って戦うよ。でも反捕鯨に対して、そういう情熱を持って抗おうとする人はほとんどいないじゃない。日本人の多くが、クジラを食べられなくなってもいいと思っている証拠と言えないかな?
佐藤 オダの言う通りでさ、いまや国民の多くがクジラなんて食べたことないでしょ? 文化だというなら給食で出すとか、せめて鯨肉を求めやすい価格設定にするだとかね。日本政府が国民に対して食鯨を守るための行動をしていないんだから。だってさ、米文化を守るために給食からパンを排除した自治体があるのに、子供たちに鯨肉を積極的に食べさせる自治体がないのはおかしいよね。鯨肉がおいしいってことがわからないければ、食鯨文化なんて守れるわけないじゃないの。
――う~ん、確かに日本政府の本気度がいまいち伝わってきてませんよね。
オダ まずは政府がIWCに対して方針をしっかり打ち出すべきだよね。このままだと、南極海だけじゃ済まなくなる可能性も大だと思うよ。
佐藤 それと文化を守ると言うなら、最低でも鯨肉のうまさを周知させなきゃ。鯨肉を愛する人間が増えれば、欧米のネガティブキャンペーンに対して、もっと大きな運動体として対抗することができるでしょ。結局、世論が捕鯨に対して無関心だから、まともな対抗手段も講ぜられないんだと思うよ。
――いやいや、たまにはお二人とも良い事言うんですねぇ。政治的テーマなのでボツになるかもなと心配していましたが、ちょっとだけ感心しちゃいました。
佐藤 横浜は大洋ホエールズの街だからね。実はハマっ子はクジラに関しては一家言あるんでさあ。
オダ ま、オレは根っからのカープファンだから、その意見には賛同しかねるけどね。
佐藤 最後ぐらい足並み揃えなさいよ!
オダ いや、カープに関しては譲れない自分がいますけども。
――ダッハッハッハッ、オダさんの価値観こそ不変なんですね。

※ここに掲載されている捕鯨の情報は、あくまで個人的見解であり、いろいろと間違ったことを掲載しているかもしれません。鵜呑みにはせず、話半分でお読みください。

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