クロアチア出身の格闘家で、日本のキックボクシング団体・K-1、日本の総合格闘技団体・PRIDE、アメリカの総合格闘技団体・UFCで主に活躍した。2006年にはPRIDE無差別級グランプリをぶっちぎりの強さで優勝を飾る。
どんなルールであっても、左ハイキックをはじめとした強烈無比な打撃によってKO勝ちを量産。しかし、肝心な試合では負けることも多く、その度に不屈の闘志で立ち上がっていく姿に、世界中の格闘技ファンから愛された。
ミルコ・クロコップの伝説の名勝負は、ミルコのその後の格闘技人生に多大な影響を与えた衝撃的な敗戦3つをあえて紹介。3つが3つとも、格闘技史に残る衝撃的な結末なため、今なお格闘技ファンの語り草となっている。
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラとのPRIDEヘビー級暫定王者決定戦に寝技で敗れたミルコ・クロコップは、今まで以上に自身の未熟な寝技技術の向上に励み、テイクダウンディフェンスやテイクダウンされた後に素早く立ち上がる技術、パスガードディフェンスなどに磨きをかけていった。ミルコの寝技スキルの追求は止まず、数ヵ月後には、柔術ではノゲイラ以上の実績を持つファブリシオ・ヴェウドゥムを寝技コーチとしてブラジルから招聘。MMAファイターとしての弱点を克服していった。
PRIDEに参戦以降、2ヵ月スパンで試合を行ってきたミルコであったが、復帰戦は敗戦から3ヵ月後。相手は怪力で知られるロン・ウォーターマンだ。ウォーターマンは他団体で高実績を残したヴァレンタイン・オーフレイムをパワーだけで圧勝するなど、PRIDEでNO.1のパワーファイターとして恐れられている猛者なのだ。復帰戦としては少々リスクの高い相手。だからこそ、完勝することができれば先の敗戦は帳消しにできる大事な試合となる。果たして敗戦からミルコは進化しているか?
試合は早速、ロン・ウォーターマンが怪力を活かしてテイクダウンに成功。ウォーターマンは太い腕でパウンド、ネッククランクを狙うも、ミルコは巧みなガードポジションで有効打を与えず、時折、下から強烈なパンチを叩き込む。ウォーターマンは上に乗りながらも有利な展開を作れず、ミルコに隙をつかれ立たれてしまう。スタンドとなればミルコの独壇場で、ウォーターマンのガードの上から左ハイキックを効かせ、ダウンしたところをサッカーボールキックを4連発。危険と判断したレフェリーが大急ぎに試合を止め、見事復帰戦を勝利で飾った。
この勝利に気を良くしたミルコは2週間後の大会にも参戦表明。日本の山本宜久と対戦することに。山本は性格に少々問題があり、対戦相手に対し敬意を払わない不遜な態度を取ったため、制裁マッチとして格上のミルコとの対戦が組まれたのだ。
試合のゴングが鳴るとすぐに、ミルコは強烈なローキックをぶち込む。しかし、山本は効いてないと言いたいのか、自分の腿をペチンと叩きミルコを挑発する。挑発に怒ったミルコは山本に強烈な左ミドルキックを見舞うが、怖いもの知らずの山本もパンチをブンブンふるってくる。そして、さらにミルコを挑発。礼を失した山本の度重なる挑発を受け、完全にキレたミルコは、強烈なサッカーボールキックにえぐいパンチを容赦なくお見舞いし、山本を血祭りに上げて勝利する。
こうしてミルコは敗戦の屈辱を払拭し、2ヵ月後に行われるPRIDE無差別級グランプリに最高の状態で挑むこととなった。一回戦の相手は元UFCヘビー級王者のケビン・ランデルマンに決定。ランデルマンは直近の試合では桜庭和志に腕十字を極められて敗れているものの、過去にはムリーロ・ニンジャやレナート・ババル、ペドロ・ヒーゾといった実力者を破っており、決して楽とはいえない危険な相手だ。
PRIDE無差別級グランプリ開幕。トーナメントには話題先行で実力的には未知数の選手も多く参戦したが、ミルコとランデルマンの他にも、エメリヤーエンコ・ヒョードルやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、マーク・コールマン、セーム・シュルトなど本物の実力者も多数参戦し、格闘技ファンで埋め尽くされた会場のさいたまスーパーアリーナは、試合前から熱気は飽和状態だ。
イベントは1R5分以内の決着が続き、あっという間にミルコの出番。ミルコが、デュラン・デュランの「WILD BOYS」の調べに乗って登場すると場内は大歓声。見る者を魅了するファイトスタイルゆえに、PRIDE参戦一年足らずでミルコの人気はダントツだ。ランデルマンと並ぶとミルコの方が頭ひとつ分背が高い。しかし、身体はランデルマンのほうが少し厚いか。両者にらみ合い、場内に緊張感が垂れ込める。いよいよ、試合開始のゴングだ。
甲高いゴングの音が鳴り響くと、ランデルマンは早速右のパンチをふるいつつミルコに組み付く。一気に赤コーナーまでミルコを後退させ、テイクダウンを狙う。ミルコはわざとコーナーにもたれかかるようにしてテイクダウンをディフェンスするも、ランデルマンのクラッチの締め付けが強烈なのか、ミルコの顔が歪む。ランデルマンはもろ差しでミルコの胴深くにクラッチしているため、ミルコがランデルマンの顔を押し突き放そうとするも、クラッチが強烈過ぎて功を奏さない。フィジカルの強さではランデルマンに分があるようだ。
依然としてコーナーでの攻防が続くも、1分13秒が経過し、これ以上の展開が生まれないと判断したレフェリーがブレイクを命ずる。再びスタンドで打撃を交わす展開となるも、ランデルマンはミルコと打ち合うつもりなのか、右腕のガードこそ高く上げているものの、お互いの打撃が当たる位置で対峙する。しかし、やはり打撃の展開ではミルコが一枚上手で、ミルコのプレッシャーによりランデルマンは左に回りつつも徐々に下がり始める。追うミルコに、ランデルマンがダブルレッグダイブのフェイント。ミルコは素晴らしい反応でタックル切りの動きを見せ、ランデルマンにさらにプレッシャーを与える。
ミルコはランデルマンの動きを冷静に洞察し、ランデルマンが真っ直ぐ後ろに下がった見るや、得意の左ハイキックを繰り出そうとしたその刹那、人間とは思えないスピードでランデルマンが飛び込み、左フックがミルコの顔面にめり込む。完璧なカウンターを入れられたミルコは後ろに吹き飛ばされ、ランデルマンが上から襲い掛かる。ミルコは、ランデルマンの左のパウンド連打を必死でガードポジションで凌ごうとするも万事休す。ランデルマンは右手でミルコの顔を強引にリングに押し付け、瞬きほどの間に強烈な左鉄槌を5連発。ミルコの腕は力なく落ち、誰の目にも明らかな失神KO負けを喫してしまった。
場内は、ミルコの衝撃的な敗戦に大爆発し、数分経ってもどよめきが治まらない。最強かと思われていたミルコの打撃も、MMAにおいてはまだまだ穴のあることが、一夜にしてファンにもファイターにも周知されてしまった。完敗である。
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生涯初の失神KO負けを喫してしまったミルコは、ダメージが抜け切らないなか、1ヵ月後の興行に強行出場し、復帰戦を行うことを決める。相手は日本の金原弘光。金原はプロレス団体・UWFインターナショナル出身の格闘家で、打撃と寝技に優れた日本有数の実力者だ。階級下の相手ではあるが、KO負けからの復帰戦で簡単に攻略できる相手ではない。
案の定、ミルコは打撃で試合をリードするものの、試合巧者の金原を攻略することができず攻めあぐねてしまう。ミルコは、内容的には圧倒し判定で勝利したものの、好調時とは程遠い動きで、ランデルマンにKO負けして落とした評価を覆すことができなかった。
しかしミルコは、ランデルマンにKO負けしたことがターニングポイントとなり、打撃も寝技も隙のない完璧に近いMMAファイターに成長を遂げる。金原戦後は、大山峻護、エメリヤーエンコ・アレキサンダー、ジョシュ・バーネットに圧倒的な内容で勝利し、KO負けしたランデルマンにもサブミッションで一本勝ちしリベンジを果たす。さらには、強豪のマーク・コールマン、ロシアの実力者・イブラヒム・マゴメドフをKOに下し、とうとうPRIDEチャンピオンにして“皇帝”とまで称されるエメリヤーエンコ・ヒョードルとのタイトルマッチまで漕ぎ着ける。
失神KOという最悪の醜態をさらしながらも、ついには最強のチャレンジャーとしてヒョードルと対峙するまでのMMAファイターに成長を遂げるきっかけとなったこの一戦こそ、伝説の名勝負と呼ぶにふさわしい。そして、どんな敗北を喫しても必ず立ち上がるミルコの姿に、ファンはしびれ、さらなる大歓声を送るようになったのだった。
第16戦 ミルコ・クロコップ衝撃的な敗戦 vsアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
第26戦 皇帝・エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsアンドレイ・アルロフスキー
第25戦 エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsミルコ・クロコップ
第24戦 エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
第23戦 エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsアローナ、ババル
第22戦 桜庭和志の記憶に残る一本勝ち vsゼルグ・弁慶・ガレシック
第21戦 桜庭和志の記憶に残る一本勝ち vsヘンゾ・グレイシー
第20戦 桜庭和志の記憶に残る一本勝ち vsカーロス・ニュートン
第19戦 桜庭和志の記憶に残る一本勝ち vsマーカス・コナン・シウヴェイラ
第18戦 ミルコ・クロコップ衝撃的な敗戦 vsガブリエル・ゴンザーガ
第17戦 ミルコ・クロコップ衝撃的な敗戦 vsケビン・ランデルマン
第16戦 ミルコ・クロコップ衝撃的な敗戦 vsアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
第15戦 みどりのマキバオー 第12巻 年度最強馬決定戦!有馬記念
第14戦 みどりのマキバオー 第10&11巻 4歳三冠最終戦、菊花賞
第13戦 みどりのマキバオー 第8巻 最強4歳馬決定戦!死闘、日本ダービー(東京優駿)
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第9戦 みどりのマキバオー 第2巻 カスケードvsピーターⅡ
第8戦 みどりのマキバオー 第2巻 マキバオーvsヒゲサンダー
第7戦 みどりのマキバオー 第1巻 マキバオーvsカスケード
第6戦 美味しんぼ 第38巻 「ラーメン戦争」 山岡士郎vs流星一番亭
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第1戦 美味しんぼ 第1巻 「油の音」 山岡士郎vs海原雄山