釣りとはまったく関係ないけど、管理人が選ぶ伝説の名勝負

第25戦 皇帝・エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦
vsミルコ・クロコップ(クロアチア)

エメリヤーエンコ・ヒョードルMMAグローブはマーシャルワールド

エメリヤーエンコ・ヒョードル

ウクライナ出身のロシア人格闘家、1976年生まれ。柔道でヨーロッパトップクラスの実力を有した実績を引っさげ、ヴォルク・ハン主催の道場に入門。2000年にプロ格闘家デビューを果たすと、一気に潜在能力が開花。元・柔道家とは思えない強烈過ぎる打撃を武器に、強豪をことごとく撃破し、プロデビューから数年後には“世界最強”の格闘家として世界中から認識されるようになる。
2000年に一度、アクシデントによる負けを喫してから、2010年にファブリシオ・ヴェウドゥムに敗れるまで、10年間無敗を続ける快挙を成し遂げるも、その後、連敗したこともあり2012年にプロ格闘家を引退。引退後はロシアスポーツ省に入省し、ロシア格闘技連盟の代表に就任する。

1R 藤田の右にグラつくも、超絶コンビネーションからのチョーク葬

アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラに勝利し、PRIDEヘビー級チャンピオンに輝いたエメリヤーエンコ・ヒョードルは、名実ともに“世界最強”の座に君臨し、世界中からその首を狙われる存在となった。真っ先にヒョードルにチャレンジすることとなったのは日本の藤田和之。藤田は新日本プロレス出身の優れたレスラーで、過去にはマーク・ケアーやケン・シャムロック、ギルバート・アイブルといった強豪を下している。

2003年6月8日、PRIDE.26のメインイベント、エメリヤーエンコ・ヒョードルvs藤田和之。両者が並ぶとヒョードルのほうが背は高いが、藤田は筋骨隆々で体の厚みで上回る。ヒョードルはいつもどおり冷静な表情であるが、藤田は気合満点の顔をしている。いよいよ試合開始だ。

1Rのゴング。藤田はカウンターを狙っているか、左ジャブを小刻みに振りながらサークリング。ヒョードルはフェイントを織り交ぜながら打ち込むタイミングを伺う。藤田がロープを背にした瞬間、ヒョードルは左を振るって飛び込むが、藤田の右カウンターが炸裂。当たりどころが良かったか、ヒョードルにダメージはなく、すぐに組み付きにいくも藤田からテイクダウンは奪えず。ファーストコンタクトは、藤田の作戦がズバリとハマった格好だ。

ヒョードルは、カウンターを受け飛び込みづらくなったのか、少々慎重になり、右腕をグルングルンと回し、藤田を挑発しつつもフェイントで誘っているようだ。そして藤田が再びロープを背負ったところで、今度は回していた右腕から飛び込む。藤田の顔面に見事ヒットさせ、慌てた藤田を押し倒しサッカーボールキックを一発。藤田は蹴り足を掴みテイクダウンを試みるが、バランスの良いヒョードルを倒すことができない。離れ際、藤田が左フックを一発お見舞い。

一連の攻防でヒョードルは少し疲れたか、肩で息をして口が開く。一方の藤田は調整がうまくいったのか、まだまだスタミナは十分だ。藤田は作戦通りヒョードルの周囲を回り、カウンター狙い。すると、ヒョードルは勝負を焦ったかフックの連打。藤田は待ってましたと右フックのカウンター一閃! ドンピシャのタイミングでヒョードルの側頭部に決まり、ヒョードルはグラつき足元が踊ってしまう。しかし、好機と見た藤田がヒョードルをテイクダウンしてしまったのが運の尽き。藤田は決定打を出せず、逆にヒョードルにダメージを回復する時間を与えてしまう。ヒョードルは隙を見て立ち上がるが、左眉から出血。

スタンドの展開、藤田は徹底したカウンター狙いだ。しかし、ヒョードルが底力を発揮。パンチしか頭にない藤田に左ミドルキック一閃。レバーに直撃された藤田は動きが止まってしまい、ヒョードルは左、右とフックをクリティカルヒット。ダウンした藤田に追撃を加えようとヒョードルが襲いかかると、藤田は反射的にシングルレッグ。ヒョードルは、首のディフェンスがおろそかになった藤田にチョークを極め一本勝ち。ヒョードルは苦戦したもののリカバリー能力も超一流であることを証明したのだった。

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2R 60億分の1、PRIDE無差別級グランプリもぶっちぎりの優勝!

藤田戦後のヒョードルは、ゲーリー・グッドリッジを一方的に叩きのめしてKO、プロレスラーの永田裕志からは戦意喪失のKO勝利と、その強さは盤石であった。そしてリングス以来2年ぶりとなるトーナメント「PRIDE無差別級グランプリ」への出場が決定。このトーナメントは世界最高レベルの選手たちが集結し、ヒョードルを始めとしてアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップ、マーク・コールマン、ケビン・ランデルマン、小川直也など、豪華な面々が揃った。

2004年4月25日、PRIDE無差別級グランプリ一回戦の相手はアメリカのマーク・コールマン。コールマンはレスリングをベースにした選手で、UFCの頂点を極めたうえに初代PRIDEグランプリ王者にも輝き、一時はマーク・コールマンこそが、世界最強の選手として世界中から評価されていた。しかし、そんなコールマンもヒョードルの相手ではなかった。序盤はテイクダウンを取られコールマンによいポジションを与えてしまったが、体を入れ替えギロチンチョークで締め上げ、外れた瞬間に左右のフックの連打。コールマンは意地で再度テイクダウンするものの、ヒョードルは下から腕十字一閃。わずか2分程度で元世界最強を下してしまった。

2004年6月20日、二回戦の相手はアメリカのケビン・ランデルマン。ランデルマンはマーク・コールマンと同門で、ランデルマンも過去にUFCヘビー級王者となっており、PRIDE無差別級グランプリ一回戦では優勝候補の一角ミルコ・クロコップをパンチでKOしている。試合開始後すぐ、ランデルマンがヒョードルをテイクダウン。ランデルマンはヒョードルの動きに合わせバックを取ると、超高角度のスープレックス! が、ランデルマンの活躍はここまでで、ヒョードルは何事もなかったかのように上下を入れ替え、パウンドの連打からランデルマンをアームロック葬。試合時間はわずか1分33秒の圧勝劇だった。

2004年8月15日、PRIDE無差別級グランプリ準決勝および決勝。準決勝の相手は日本の小川直也だ。小川は元柔道重量級の世界的選手で、MMAの実力も日本国内では屈指の選手だ。しかし試合は一方的で、ヒョードルは、打撃連打からもつれて寝技になるとマウントを簡単に取り、小川の動きに合わせて腕十字を素早く極め1分もかからず完勝。小川はなにもできなかった。

決勝の相手はアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラだ。ノゲイラは横井宏考、ヒース・ヒーリング、セルゲイ・ハリトーノフを下して決勝にまで勝ち進み、ヒョードルとは一年半ぶりの再戦だ。試合開始後すぐ、ノゲイラは寝技となり下から次々と関節技を仕掛け、ヒョードルに強いパウンドを放つスペースを与えない。試合はほとんどイーブンで進んだが、偶然のバッティングでヒョードルが頭部を深くカットし、試合続行不可能となったためノーコンテスト。試合は持ち越されることとなった。ノゲイラは動きがよかっただけに、納得のいかない様子。

2004年12月31日、改めてヒョードルとノゲイラによるPRIDE無差別級グランプリ決勝戦。試合はほぼ一方的な展開となり、ヒョードルは打撃とテイクダウンでノゲイラを圧倒すると、パウンドや踏み付けを数発打つだけで寝技は深追いはしない。ノゲイラはところどころでいい動きを見せるものの、寝技以外の攻防ではヒョードルに歯が立たず、内容的にはほぼ完封されて判定負けを喫した。

ヒョードルは、PRIDE無差別級グランプリをぶっちぎりの内容で優勝したことで、改めて満天下に自身の実力を知らしめたのだった。そして絶対チャンピオン・ヒョードルに、唯一対戦経験のないPRIDEヘビー級トップの一角、ミルコ・クロコップが挑むこととなった。

3R 最強ストライカー・ミルコに打ち勝ち、文句なしの人類最強を証明!

ミルコ・クロコップはクロアチア出身の打撃を絶対の武器にしている格闘家で、立ち技格闘技団体K-1で優秀な成績をおさめたのちにMMAに転身。藤田和之や桜庭和志を破り日本での評価と人気を高め、打倒ヒョードルを目標に2003年年にPRIDEに本格参戦してからは、ヒース・ヒーリング、イゴール・ボブチャンチン、エメリヤーエンコ・アレキサンダー、ジョシュ・バーネット、マーク・コールマンといった世界的強豪を撃破している。ミルコはストライキング能力ではヒョードルを上回ると評価されており、特に左のハイキックは強力無比であり、直撃されればどんな選手もKOは免れない。

2005年8月28日、エメリヤーエンコ・ヒョードルとミルコ・クロコップのPRIDEヘビー級タイトルマッチ。両者並ぶとミルコのほうが背は高いが、体の厚みはヒョードルが勝る。ヒョードルはいつもどおり冷静沈着の表情であるが、ミルコは気合が表情にあらわれている。大歓声のなか、甲高いゴングの音が響き渡り、いよいよ世紀の一戦が始まる。

1R、ヒョードルがプレッシャーをかけ前に出て、ミルコが足を使って距離をとる展開。ヒョードルはさっそく飛び込みテイクダウンを狙うも、ミルコは対策が出来ておりそれを許さない。そしてミルコは中間距離を取り、信じられないほどのスピードで得意の左ミドルキックを放つも、ヒョードルはムエタイ式のニーガード! 全力の左ミドルキックを硬い膝で受けられてしまったミルコは、足を痛めたか、一瞬、動きが鈍る。ヒョードルも手応えあったか、ますますプレッシャーをかけ攻勢を強める。ミルコは下がらされ、カウンターを返すのが精一杯だ。

依然、プレッシャーをかけられ続けるミルコであったが、右手でヒョードルの拳を触れてうまく距離をとるという、さすがの動きを見せる。すると、次第にミルコのペースとなり、左ストレートが単発ながらも決まりだす。そして、試合開始後約2分30秒、ヒョードルが打ちにきたところにドンピシャのタイミングで左ミドルキックを炸裂させる。しかし、それでもヒョードルは前進を続け、ミルコにフックの連打をお見舞いし、ミルコに完全にはペースを握らせない。

一進一退の攻防が続くなか、4分30秒、ミルコの左ストレートが炸裂し、ヒョードルは一瞬グラつく。ミルコは一気にパンチの連打で詰め、ヒョードルの大振りの右フックをかわして左のハイキック。ヒョードルの頭頂部付近に軽くヒットするも、さらに追撃を加えようとしたところでバランスを崩し、寝技の展開となってしまう。

寝技となるとレベルの差は歴然で、ミルコはヒョードルの決定打となるパウンドを凌ぐのがやっと。細かいパウンドを多く被弾してしまい、ヒョードルに試合を完全に支配されてしまう。結局そのまま、1Rは終了。ミルコはいいパンチを数発当てたが、ヒョードルが取ったラウンドだった。

2R、ミルコはスタミナが切れたか、いきなりヒョードルの連打を浴びてしまう。さらにヒョードルは強烈な右のハイキック。なんとかガードをしたミルコであったが、ラウンド序盤からヒョードルがペースを握る。ミルコは左のミドルキックやハイキックを返すも、足のダメージもあって強くは蹴れない。ヒョードルは休むことなく、打撃を振るい続け、組み技からの左フックでミルコに大きなダメージを与える。ミルコは手が出なくなり、ヒョードルの打撃をなんとか凌ぐので精一杯だ。そして残り2分でヒョードルはテイクダウンに成功。1R同様にパウンドで攻め続け、そのまま2R終了。ミルコは苦しそうな表情だ。

3R、ヒョードルは打撃でミルコにダメージを与える。ミルコは手を出すものの、ダメージと疲れでパンチもキックも威力がない。そしてミルコは簡単にテイクダウンを取られてしまい、パウンドを浴びる。もはやこれまで。ミルコは為す術がなく、3Rもヒョードルに押し切られてしまった。判定は文句なし3-0でヒョードルに軍配が上がった。しかし、ヒョードルの顔面も傷だらけであり、いかに激闘であったか物語っているようだった。

ヒョードルは、PRIDEヘビー級王者となってからも絶対的な力で強豪を退け続け、PRIDE無差別級グランプリではぶっちぎりの強さで優勝。そして最強のチャレンジャーとまで呼ばれたミルコ・クロコップを完封して王座防衛も果たし、“人類最強”の評価は不動のものになった。寝技やパウンドだけではなく、立ち技のストライキングも世界トップクラスであることを証明したミルコ・クロコップ戦こそ、伝説の名勝負と呼ぶにふさわしい。

過去の伝説の名勝負

第26戦 皇帝・エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsアンドレイ・アルロフスキー

第25戦 エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsミルコ・クロコップ

第24戦 エメリヤーエンコ・ヒョードルの世界を驚嘆させた一戦 vsアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ

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