釣りとはまったく関係ないけど、管理人が選ぶ伝説の名勝負

第6戦 美味しんぼ 第38巻 「ラーメン戦争」 山岡士郎vs流星一番亭

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美味しんぼ38巻

日本中にグルメブームを巻き起こした社会派マンガ。 主人公・山岡士郎が、自身が勤める東西新聞社の創立100周年記念企画“究極のメニュー”の担当者となり、同僚の栗田ゆう子とともに究極の美味を探求する。 山岡と栗田が究極のメニュー作りを進めるなか、ライバルの帝都新聞社も“至高のメニュー”作りを開始し、 総指揮に書家、陶芸家として当代一の名声をほしいままにし、現代最高の食の達人と評される山岡の実父・海原雄山が就任する。 程なくして究極のメニューと至高のメニューは週刊誌上で対決することになったのだが、海原の実力は凄まじく、山岡は幾度も敗北を味わわされることとなる。 果たして山岡は、そびえ立つ海原の牙城を崩すことができるのか・・・。

1R 山岡、ラーメン店とタッグを結成

第6戦は美味しんぼラストマッチ、番外編、不屈の男・山岡vsラーメンチェーン店・流星一番亭との対決。 山岡は、同僚の夫であり友人の荒川精作から、元・自動車会社取締役が始めたラーメン店が鳴かず飛ばずだから力を貸してほしいと相談を受ける。 乗り気になれない山岡であるが、そのラーメン店店主の橋田と意気投合したことで力を貸すことを約束。さっそく流行りのラーメンチェーン店・流星一番亭の屋台に橋田を連れ出し、うまいラーメンの見本ともいえる一杯を味わわせる。 動物系と魚介系のダシが見事に組み合わされたスープに衝撃を受けた橋田は、自分の無力さにガックリと肩を落とすが、そこで知り合った少年の母で、流星一番亭から圧力を受けているラーメン店・金銀軒を営む春代に恋をしてしまい、流星一番亭を超える味のラーメンを作ることを決意するのである。

橋田、春代と共闘することになった山岡は、日本ラーメン総合開発研究所所長でラーメンに関する豊富な知識と情報を持つ長井をアドバイザーに迎え、打倒・流星一番亭に乗り出す。 そして流星一番亭の本社ビルに山岡たちは乗り込み、社長の雉川盛一に宣戦布告を告げるのである。宣戦布告された雉川は、

「つぶれかけたラーメン屋と、素人の道楽の域を出ないラーメン屋が、いくら力を合わせたところで何が出来る。まあ、好きなようにあがくがいいさ」

と笑うが、山岡に流星一番亭のスープの秘密(ナンプラー)を見抜かれていることもあり、雉川の目は本気で笑っておらず、山岡を完全に敵視する。

2R ラーメン三銃士、見参! いよいよ勝負

流星一番亭に対向するために、長井は自身のコネクションから麺の専門家・乃士勇造、スープの専門家・出川 実、具の専門家・多木 康で結成されたラーメン三銃士を呼び寄せ、新しい金銀軒のラーメンの製作に取り掛かる。 山岡一同はラーメン三銃士が用意した、様々な麺、スープ、具の試食をした結果、スープは流星一番亭と差を出すため鶏、豚、牛を使った動物系がメインのダシとし、具は極上メンマと煮豚、麺を卵入りのやや細目チヂレ麺に決定し、流星一番亭に対向しうる一杯を完成させた。

そして橋田は元・自動車会社取締役のキャリアを活かし、流星一番亭と同じような屋台車を製作。金銀軒を狙う流星一番亭の屋台の真横にあえて出店し、山岡が雉川に「いよいよ勝負させてもらうぜ!」と告げたことで、とうとう流星一番亭との全面戦争が勃発したのだった。

3R 栗田、最強のサクラ・海原雄山をゲット!

いざ開戦したものの実力差は明らかで、金銀軒はオープン初日だというのに一人の客しか集客できないありさま。一方の流星一番亭は材料が品切れるまで売り尽くしており、営業後、山岡たちは雉川から、

「勝負だとかなんとか大口たたいて、いいざまじゃないか。客の目は節穴じゃないよ。二つ店が並んでいれば、見ただけでどっちの店が旨いかすぐに見破るのさ。(中略)無駄なあがきとは、このことだ」

と悪態をつかれてしまうが返す言葉もない。そこで山岡はサクラ作戦を発案。橋田や春代から反対意見が出るものの、客に来てもらわないことには話しにならないと諭し、作戦を実行することに。 山岡と栗田の知己を中心にサクラを呼び込むことになったが、栗田が街を歩いているとバッタリと海原雄山に出くわす。栗田が思い切って事情を話すと、なんと本来は敵である海原が来店することを了承したのだ。

山岡のサクラ作戦が功を奏し、一般客も含めて賑わいを見せる金銀軒に約束どおり海原は現れた。動揺する山岡を尻目に栗田は来賓として迎え入れ、ラーメンの試食をお願いする。海原はスープを一口飲み、麺をすする。一同が注目するなか、海原は「だめだな、これは」と山岡たちの作ったラーメンに失格の烙印を押す。

当然山岡は「いやがらせだ!」と激怒するが、海原のことを山岡以上に熟知し、心酔すらしている栗田は、海原の批判は真に受けるべきだと橋田以下のメンバーに進言する。 メンバーに動揺が広がってしまったものの、山岡はこのまま続ければ問題ないとメンバーたちを鼓舞し、実際、一週間後にはサクラが一人もいなくて金銀軒は大盛況となった。 しかしそのまた一週間後、客は減り続けてしまい、皮肉にも海原の言うとおり、金銀軒のラーメンは客からも失格の烙印を押されてしまった。海原の言葉に聞く耳を持たない山岡はなぜ客が減ってしまったのか見当もつかないが、海原の言葉を真摯に受け止めていた栗田は思うことがあった。金銀軒のラーメンは上品過ぎるのではないかと・・・・・・。

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4R 巨星・海原の助け舟により金銀軒の逆転勝利!

栗田は海原に教えを請うため、美食倶楽部に海原を訪ねる。栗田はどこが悪いのかわからないので教えてほしいと正直に懇願するが、海原は「そんなことは最初から、わかっていたことではないか。それを今さら、何を言うか」と取り合ってもらえない。 挙句には「情けない奴だ、そんなことがわからんのか」と海原からギロリと睨まれてしまい、「そんな簡単なことがわからないのは、食に対する基本的な素養が欠けているからだ。そんな者は、私にものを教わる資格はない。帰れ」と追い返されてしまう。 栗田は甘えすぎていたと反省し落胆するが、栗田には人一倍甘いツンデレ海原雄山は、答えが入っているという小包を栗田に託すのである。

小包を開くと中には和風ダシ、中華ダシ、フォンドヴォー、生醤油、ナンプラー、そして化学調味料と書かれた紙が入っていた。これらが何を意味するのか悩む一同、海原と対立する山岡は興味も示さない。 難問を前に途方にくれてしまった栗田は、背に腹はかえられないため土下座して海原に教えてもらおうと提案し、橋田と春代も同意したが、栗田たちに土下座をされては示しがつかなくなる山岡は、明日までに解答してみせると思わず嘯いてしまう。その帰り道、栗田は思い続けていたある疑問を山岡にぶつける。

「金銀軒のラーメンの味で一つ気になることがあったの。上品過ぎないかしら。長井さんは金銀軒のラーメンのことを、こんな上品なラーメン食べたことがないっておっしゃったわ。出川さんは、金銀軒のラーメンのダシは、自然で上品な味が出せたと満足しているとおっしゃった・・・・・・
私いろいろ考えたんだけど、ラーメンて異常な食べ物だと思うの。だってそうでしょう。ラーメンを食べる雰囲気と環境は、ありとあらゆる外食の中でも特別のものがあるわ。屋台は言うに及ばず、専門店もみんなこぢんまりしていて、人気のある店であればあるほど混雑していて、とにかく落ち着いて食べるのを楽しむ雰囲気じゃないわ。
(中略)私、ラーメン屋でラーメンを食べている人を見るたびに、考えてしまうの。みんな暗い顔をして黙々と食べているわ。食べる楽しみを享受しているとは思えない、何か罰でも受けているみたい。そんな思いをしてまで、なぜラーメンに引かれるのか、それは何か、とても暗い情熱に突き動かされているからじゃないかと思うのよ。
(中略)麺はどこから来たの? スープの味つけの基本はどこから来たの? 麺の上に乗せる具はどこから来たの? その一つ一つがすべて異国から来たのは明らかなのに、自分の故郷から来たもののように、日本人に思わせるのはなぜなの!?
そういう疑問に対する答えを探したいという情熱が、意識の下に潜んでいて、それが日本人をラーメンに向けて引き寄せる、と考えると、なんだかつじつまが合うような気がするの。(中略)そんな食べ物が、上品すぎるなんてことがあっていいかしら」

と栗田は鋭い考察を述べる。山岡はしばしの熟考後、海原からの難問がわかったと栗田に伝える。一ヵ月後、海原からの問題の解答が正しかったことを証明するように、金銀軒は流星一番亭に負けず劣らずの人気店に変貌していた。 栗田は改めて海原を金銀軒に招待し、再度ラーメンを試食してもらう。緊張の一瞬・・・・・・なんと海原は見事な食べっぷりでラーメンを一息に完食してしまった。金銀軒のラーメンが海原から認められたのだ。

金銀軒の驚くべき巻き返しに、流星一番亭社長の雉川もラーメンの試食を願い出る。雉川はラーメンのスープを一口飲み「おおう! なんとこのスープは!」と驚愕する。 山岡は鶏、豚、牛とどちらかといえば西洋スープの成分に近い金銀軒のダシを改善するために、長期熟成天然醸造醤油をラーメンのカエシに用いることで、見事に日本人好みの味に仕立て直したのだった。

「旨かった。いい競争相手が出来て、励みになる。とはいえ、金銀軒をつぶすのは、難しくなったな。他の店を標的に選ぶことにしよう」

と雉川は素直に負けを認めた。山岡、橋田、春代は勝ったのだ! 強敵・流星一番亭を退け金銀軒の看板を守ることに見事に成功したのだ。山岡が雉川との死闘を制したこの一戦こそ、伝説の名勝負と呼ぶのにふさわしい。

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