釣りとはまったく関係ないけど、管理人が選ぶ伝説の名勝負

第22戦 桜庭和志の記憶に残る一本勝ち vsゼルグ・弁慶・ガレシック

桜庭和志信頼の格闘技用品はマーシャルワールド MMAグローブetc

桜庭和志

秋田県出身の格闘家で、中央大学レスリング部で主将を務めた後、高田延彦が率いるUWFインターナショナル(以下、Uインター)に入門。入団当初から実力は高い評価を受け、プロレスだけではなく様々な格闘技戦も積極的に行う。同い年の先輩・田村潔司のUインター退団前には、運営側からの指令でセメントマッチの相手を務めることになった(桜庭の2連敗)。
MMAに本格的に参戦してからは、ベースのサブミッションレスリングを活かして世界の強豪と堂々と渡り合い、辛酸をなめ続けていた日本格闘技界のエースとなる。桜庭和志が見せつけたテクニックは様々な格闘家に影響を与え、いまなおその実績は色あせずに輝きを放っている。

0-1R 桜庭、最強にして最凶、ブラジルのヴァンダレイ・シウバに三連敗

ヘンゾ・グレイシーに勝利した桜庭和志は、名実ともに世界のトップに躍り出て、押しも押されもせぬPRIDE・NO.1ファイターとして君臨。当然、世界中のファイターから狙われることとなり、桜庭はブラジルの新鋭ヴァンダレイ・シウバと対戦することが決定する。

当時の格闘技界は、ブラジルの選手といえばブラジリアン柔術の選手がほとんどという状況のなか、シウバは柔術ではなくムエタイをバックボーンに持つストライカーだった。ガイ・メッツァーやダン・ヘンダーソンといった強豪をいい内容で下しており、実力で桜庭和志にチャレンジする切符をもぎ取ったのだった。また、シウバは度々桜庭のことを挑発しており、桜庭にとって因縁浅からぬ相手であった。

全盛期の桜庭であったが、シウバとの試合はほぼ一方的な展開となった。シウバは打撃のプレッシャーで桜庭を後退させ、パンチと組み膝で圧倒。一度、桜庭のカウンターパンチで膝を付いたものの、すぐに立て直し、桜庭の顔面に膝蹴り。そしてこの試合から解禁となった四点ポジションでの膝蹴りとサッカーボールキックで、桜庭をマットに沈めた。桜庭の敗北は、打撃対処の問題もあるが、なんといってもシウバとの体格差はいかんともしがたいものであった。

ヴァンダレイ・シウバに敗北してからの桜庭はまさに受難続きで、シウバとの再戦で左肩を脱臼してTKO負け、ミルコ・クロコップには下からの蹴り上げで眼窩底骨折のTKO負け、さらに格下と思われていたニーノ・エルビス・シェンブリとの試合では、試合自体は桜庭が圧倒したものの、不運にもシェンブリの頭がカウンターのバッティングとして入り、ダウンしたところを打撃で追撃されKO負けと、ただ敗北するだけではなく、桜庭の体に重大なダメージが蓄積するひどい負けの連続であった。

しかし、KO負けが続いた桜庭であったが、主催者側はこれまでの桜庭の実績と人気を評価し、シェンブリに敗北してから半年弱後のPRIDEグランプリ一回戦で、三度目のヴァンダレイ・シウバとの試合が決定。桜庭は、肉体改造をして大幅にパワーアップを果たし、シウバとの闘いに臨む。試合は打撃でKOしたいシウバと、寝技で極めたい桜庭のスリリングな駆け引きが続いたものの、桜庭のローキックにシウバは右フックをカウンターで合わせ、顎を撃ちぬかれた桜庭は失神KO負けし、遂にシウバに勝利することはできなかった。

0-2R PRIDEを離れ、HERO'S、DREAMへ。そして受難はまだ終わらない

ヴァンダレイ・シウバに三連敗を喫した桜庭は、体に蓄積したダメージからか、以前のようなパフォーマンスをなかなか発揮できなくなっていった。元UFCヘビー級王者のケビン・ランデルマンを腕十字で下すというビッグサプライズをやってのけたものの、アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラやヒカルド・アローナといった強豪には敗北を重ねた。そして桜庭は、美濃輪育久戦(アームロックで桜庭の勝利)を最後にPRIDEを離れ、K-1が主催するHERO'Sへ移籍することとなった。

HERO'Sに移籍しても桜庭の受難は変わらず、移籍初戦のケスタティス・スミルノヴァス戦では勝利したものの、半失神まで追い込まれ恐ろしいほどのパンチの連打を浴び、次戦の秋山成勲戦では、秋山が体にスキンクリームを塗りたくるという重大な反則行為を犯した結果、グラップリングが機能しなくなった桜庭は百発以上のパウンドを浴びてしまう(試合は無効試合裁定)。また、再戦となったホイス・グレイシー戦では、動きの悪さが目立ち判定負けを喫してしまう。

ホイスに敗北した桜庭は、後に盟友関係となる柴田勝頼に腕十字で勝利、先輩U系レスラーでパンクラス創設者の船木誠勝をアームロックで下し連勝するも、ファンの印象に残る目立った活躍はできなかった。そして、以前に所属したPRIDEが崩壊し、HERO'Sは旧PRIDE運営スタッフを迎え、新団体DREAMとして再出発することになった。

団体がDREAMになると、桜庭はもはや主役ではなくなり、いちミドル級選手として世界の強豪と対峙することとなる。DREAM初戦の相手は極真空手のチャンピオンのアンドリュース・ナカハラだ。ナカハラは空手のチャンピオンといえども初のMMAであったため、桜庭はまったく問題とせずにフェイスロックをかなりえげつない角度で極めて勝利を飾る。

2戦目の相手は、強烈な打撃で恐れられる一流ストライカーのメルヴィン・マヌーフだ。実力差は明確であり、桜庭はマヌーフのキックで左腕尺骨を骨折させられた挙句、パウンドの連打で失神KO負けを喫してしまった。このマヌーフ戦でのダメージは大きく、半年後にUWFインターナショナル時代の先輩・田村潔司と12年半ぶりに再戦するも、精彩を欠き、まったくいいところなく敗北してしまった。桜庭の痛ましい姿に、会場は限界かという空気が支配するようになる。

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1R 桜庭、事実上最後の一本勝ちはUWFを代表するあの足関節技!

メルヴィン・マヌーフ、田村潔司に連敗した桜庭は著しくコンディションを落とし、10ヵ月という長い間試合から遠ざかることとなる。復帰戦は2009年10月6日、DREAM.11において現役プロボクサーのルビン・Mr.ハリウッド・ウィリアムズとの一戦。寝技などまったくできないウィリアムズは桜庭にとって噛ませ犬でしかなく、3分弱でアームロックを極めて勝利する。

無傷で試し運転を終えた桜庭は、20日後のPRIDE.12において、DREAMミドル級トップ4の一角であるゼルグ・弁慶・ガレシックと、金網でのMMAマッチを行うことが決定する。ガレシックは寝技に難があるものの打撃は強烈であり、K-1で好実績を残した打撃のスペシャリストである金泰泳を2度までも破っている。桜庭は、打撃系選手と相性がよくないことに加え、最近のコンディション不良状態では、勝つことはおろか、まともな状態でケージを出られるかもわからない。

いよいよ12年ぶりのケージでの試合。桜庭とガレシックが対峙すると、体重は同じながらもガレシックのほうがだいぶ背が高い。この上背の差は、ガレシックは強烈な打撃が武器だけに、桜庭の不利は否めない。両者グローブを合わせて、クリーンファイトを誓い合い、試合開始のゴングが打ち鳴らされた。

両者間合いを計り、迂闊には仕掛けようとしない。桜庭はガレシックの打撃、ガレシックは桜庭のテイクダウンを警戒しているようだ。しかし、痺れを切らしたガレシックが徐々に間合いを詰め、桜庭にプレッシャーをかけ始めるも、この日の桜庭は体にキレがあり、ガレシックが前足重心になった瞬間にシングルレッグダイブでテイクダウンを奪う。

ガレシックはテイクダウンを取られながらも、下からパンチをブンブンと振り回す。リーチが長いだけに、下からのパンチも決して弱くはない。しかし桜庭は、ガレシックが動転している隙にアキレス腱固め。極まったかに思えたが、ガレシックは体が柔らかく、すぐに体を曲げてアキレス腱固めが極まらない体制を取る。桜庭はならばと、アキレス腱固めのクラッチをキープしたまま、プロレスのニーロックに近い形でガレシックの足を捻り上げる。

桜庭の強烈なニーロックにガレシックの表情は歪むが、ガレシックは驚異的な柔軟性を発揮し、ニーロックを耐えつつ下からパンチを放ち続けたことでスペースが生まれ、桜庭に左足を取られたままであるが半回転して上のポジションを取る。ガレシックは好機と見て、全力のパウンドを桜庭の顔面に集めたのだった。桜庭は成す術なくパウンドを浴び続けるが、ガレシックの左足は絶対に離さず、パウンドを意地でこらえる。

絶体絶命かに思われた桜庭であったが、キープしていたガレシックの左足を離し、パウンドを浴びながらもアンクルホールドに移行。このアンクルホールドが功を奏し、ガレシックは上のポジションをキープできずに尻餅をついてしまう。その瞬間、桜庭はガレシックの左膝を抱え、UWFを代表する足関節技の膝十字固め一閃。桜庭が一気に、ガレシックの左膝が逆方向に曲がるほど強烈に締め上げたため、ガレシックは激痛のあまり悲鳴を上げながらタップアウト。桜庭はすぐに技を解いたが、ガレシックは激痛で左膝を抱えてのた打ち回る。結局、膝十字固めやその前のニーロックで、一人で立てないほどの強烈なダメージを受けてしまった。

非常に濃い内容であったが、試合時間は1R1分40秒。強豪と呼べる相手との試合では、最短の試合時間となった。桜庭は久々の会心の勝利に、マイクを持つ。

「皆さん、今日はありがとうございました。(四方に頭を下げる)え~っと、結構いっぱいいっぱいで試合をしてまして。いや~弁慶選手、絶対手足うるさいなあと思っていたんですけど、見事にうるさくてですね、途中心のなかで『うるせー!!』と叫んでましたけど、やっぱりすごいバランスが良くてすごく強い選手だと思いますんで、僕、たまたま勝てたと思います。またやったらたぶんやられちゃうかもしれないけど、皆さん、今日は本当にありがとうございました」

と、らしいマイクで喜びを語った。観客も、久々に強豪から会心の勝利を上げた桜庭を手放しで祝福する。“ファンタジスタ”とまで呼称された全盛期のように華麗な勝利ではなかったものの、極めの強さは健在で、桜庭がいかに優れたグラップラーであったか、改めて観客は再確認させられたのだった。

ゼルグ・弁慶・ガレシックに勝利後は、ハレック・グレイシーに判定負け、ジェイソン・メイヘム・ミラーにはキャリア初となる肩固めで一本負けを喫し、階級を落として臨んだマリウス・ザロムスキーとの試合では右耳が取れかけるほどの裂傷を負い敗北。そして、ヤン・カブラルというブラジリアン柔術の選手にも肩固めで一本負けを喫し、この試合が事実上MMAラストマッチとなった。

桜庭は、キャリアの晩年はコンディション不良で本来の力を発揮することはできなかったが、MMAで残した実績はいまだに日本人でダントツであり、世界の格闘技界に与えた影響も大きい。そしてなによりも、負けることを恐れず、世界の強豪と勝負し続けた桜庭和志の精神は、称賛に値し、誰もが敬意を表すべきなのだ。

それにしても、パウンドを浴び続けてもなお、勝負を諦めずに膝十字固めで一本勝ちしたゼルグ・弁慶・ガレシック戦こそ、桜庭の伝説の名勝負と呼ぶにふさわしい。これにて、桜庭の伝説の名勝負は完。

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