釣りとはまったく関係ないけど、管理人が選ぶ伝説の名勝負

第11戦 みどりのマキバオー 第4巻 朝日杯3歳ステークス

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みどりのマキバオー第4巻

漫画家・つの丸先生の代表作で、第42回(平成8年度)小学館漫画賞児童部門受賞作品。 桜花賞馬ミドリコの仔として産声を上げたマキバオー(うんこたれ蔵)の成り上がりストーリーがテーマとなっている。 マキバオーは当初、そのロバのような犬のような容姿のため馬主からはまったく期待を持たれなかったが、才能は同世代馬の中でもトップクラスであり、 ライバル馬のカスケード、アマゴワクチン、サトミアマゾン、アンカルジア、ニトロニクス、ベアナックルなどと死闘を繰り広げ、成長していく。 特に世代最強馬であるカスケードとのレースはまさに名勝負といえる内容であり、カスケードはマキバオーにとって常に高い壁としてそびえ立つ。 果たしてマキバオーはカスケードを越えられるのか!?

1R いよいよ迎える最高峰レースG1・朝日杯3歳ステークス

マキバオーはニトロニクスとの雨の激戦を制し、続く京成杯3歳ステークスでもニトロニクスを返り討ちにし、3歳最強馬決定戦であるG1・朝日杯3歳ステークスに挑むことになる。 朝日杯3歳ステークスにはマキバオーのほか、世代最強馬との呼び声も高いカスケード、そのカスケードをマッチレースで下したピーターIIの実弟であるアマゴワクチンなどがエントリー。

朝日杯3歳ステークスに向けてマキバオー一行は中山競馬場へスクーリング(競馬場の下見)で訪れる。1,600mのコースをゆっくり見て回るが、調教師でありチームリーダーの飯富昌虎は中山競馬場名物の残り200mの心臓破りの上り坂が勝負になると力説。 マキバオー、チュウ兵衛、山本管助はそびえるような心臓破りの上り坂を前にして最後は根性勝負になると腹をくくるのだった。

決戦前日、朝から降り始めた雨は夕方になっても止まず、このまま雨が降り続ければ重馬場が苦手なマキバオーは圧倒的不利になると気を揉む飯富昌虎。レースを何度シュミレーションしてもこのままでは勝てないと焦りと不安でいっぱいになってしまう。 深夜、ジョッキーの山本管助も緊張で寝付けなかった。窓から外を見ると懸念していた雨はすっかり止んでいた。管助は悩んでいても仕方がない、外でランニングをしようと思い立ちコースに行ってみるとそこには飯富昌虎とみどり牧場の三枝友則の姿が。飯富たちも馬場の状態が気になりコースを視察しに来ていたのだ。

飯富たちがコースに目をやると、ひとりでに動く雑巾が一枚。なんとネズミの親分・チュウ兵衛が重馬場が苦手なマキバオーを思い、濡れた馬場を拭いていたのだ! チュウ兵衛の行為に心打たれた飯富たちもチュウ兵衛に加わり、一緒になって雑巾掛けを始めた。 飯富はチュウ兵衛に言うのである。

「今度は作戦もクソもない、いい馬場で思う存分走らせてやりたい。そういう事だよなチュウ兵衛」

そしてやはり眠れなかったマキバオーもコースに来ており、飯富やチュウ兵衛たちの思いと行為を間近で目撃し、朝日杯3歳ステークスは絶対に負けられないと心に誓うのであった。

2R マキバオーは一番人気! いよいよG1レース・朝日杯3歳ステークスのスタート!

いよいよ決戦当日。快晴。懸念していた馬場は良馬場となりそうだ。マキバオー陣営も準備は万端。気合十分で中山競馬場へと乗り込む。

パドック。G1のパドックともなると熱気はもの凄く、2枠2番“黒い殺し屋”カスケードの登場で沸騰し、5枠5番“三冠相続馬”アマゴワクチンの登場で再沸騰する。しかし5枠6番“白い珍獣”マキバオーの登場に、観衆は沸騰どころか蒸発する勢いで声援を送る。歓声に比例して人気は一番、オッズは単勝1.3倍をつけた。

本馬場入場、マキバオーは気合の表れかハチマキ姿。アマゴワクチンは兄・ピーターIIのシャドーロールを装着し登場だ。しかし本馬場入場で衆目をさらったのはカスケード。騎手の服部政人が馬服を肩に入場し、内ラチを飛び越え本馬場に入るというパフォーマンスを見せた。そしてファンファーレが鳴り響く。各馬ゲートイン。高まる緊張。“ガシャコン!”とゲートが開き、いよいよレースのスタート。先頭でゴールを迎えるのは果たしてどの馬なのか!?

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3R カスケードvsアマゴワクチン、マキバオーは一歩後退

ハナをきったのは先行逃げ切りを得意とするアマゴワクチン。脇目もふらずグングンスピードアップしレースの主導権を握る。しかしそれもつかの間、“黒い殺し屋”、本来は末脚で勝負するタイプのカスケードがアマゴワクチンに併走する。しかしこれまたつかの間、一番人気のマキバオーも2頭に並ぶ。もっともマキバオーの場合は完全に入れ込んでしまっており、チュウ兵衛も管助もマキバオーをなだめるのに必死となる。

それぞれの思惑が交錯するなか、チュウ兵衛は付けていたハチマキでマキバオーの目に覆い、なんとかマキバオーを先頭争いから脱落させることに成功する。マキバオーは狼狽し、ハチマキを外してと懇願するも、ハチマキを取れば再び入れ込むことを恐れたチュウ兵衛は、ハチマキで目隠ししたままレースを続けることを管助に告げる。

一方、先頭を走るはアマゴワクチンとカスケード。アマゴワクチンは因縁の相手・カスケードに思いの丈をぶつける。

「なあ・・・・・・カスケードさんよ・・・世間じゃ兄の敵討ちだとか騒いでいるようだが・・・オレはあんたを敵だなんて思っちゃいねえ・・・偉大な兄を超える馬になるための最終試験だと思っている・・・あんたに勝った時が兄・ピーターIIを超える時! このレースを先頭でゴールを切る! そして来年・・・兄の成し遂げられなかった3冠を全て・・・制する!!」

そしてアマゴワクチンは溜めていた力を一気に放出しスピードアップ。カスケードを突き放しにかかる。しかし逃げるアマゴワクチンに“黒い殺し屋”カスケードも応じてみせる。

「お前の兄貴は強い馬だった・・・オレもピーターIIとは再戦したかった・・・・・・オレにとって唯一の敗戦だからな・・・だがもうその望みも叶わない・・・負けっぱなしはごめんだ!! もう一度“お前”がその願いを叶えてくれ!! 期待してるぜピーターIIの弟よ!!」

と、今度はカスケードがアマゴワクチンを突き放す。2頭が先頭でデッドヒートを繰り広げるなか、マキバオーは「もう大丈夫・・・ハチマキは必要ないのね・・・勝負はあくまでゴールで決まる、ゴールを先に切ればいいのよね。最初からとばす必要はない・・・自分のペースを守る事が大事だったのよね」とすっかり落ち着きを取り戻していた。

4R 勝負は心臓破りの坂、勝ったのは驚異の末脚を見せ付けたあの馬!

ハチマキを取り去ったマキバオーだが、最後の直線でカスケードの姿を目にした時に、持てるすべてをぶつけるため、あえて目をつむりながらレースを続ける。第3コーナーに入ると各馬が仕掛け、カスケードとアマゴワクチンを捉えにかかる。しかし、レースレコードは1分34秒0に対し、レースはこのままいけば1分31秒台と超ハイペースな展開。この段階で仕掛ければ途中で脱落することは必至。それに気がついているのは先頭2頭とマキバオーだけか。

第3コーナーで仕掛けた馬たちが次々と脱落するなか、ペースをキープし続けたカスケード、アマゴワクチン、ミドリマキバオーの3頭の勝負になる。そしていよいよ残り200m、心臓破りの上り坂だ。序盤のせめぎ合いでスタミナをロスしていたカスケードとアマゴワクチンが坂手前でひと息ついた瞬間。その瞬間を狙っていたチュウ兵衛の合図(頭噛み)でマキバオーは一気のスパートをかけたのだった。

鬼気迫る表情で、大外一気でカスケードとアマゴワクチンを抜きさるマキバオー。チュウ兵衛と管助の見事な騎乗に、飯富は、

「見事だ・・・チュウ兵衛! 管助! 元々最後の直線に入った所でスパートする作戦を他の馬が第3コーナーで一勢に飛び出したのを見てタイミングを遅らせたのだろう。見事だ・・・見事な読みだ。他の馬がバテ始め、カスケードとアマゴワクチンが坂手前で息を入れたほんの一瞬・・・そのほんの一瞬をついた見事な仕掛け。
このレース勝てる!! ここまで完璧なレース運びで負けるのならこのレース・・・ハナから勝機はねえ事にならあ!!!」

と一匹と一人に賞賛を贈る。しかしレース展開は予断を許さず、マキバオーが追い抜いたとはいえカスケードとアマゴワクチンのペースが落ちたわけではない。必死に逃げるマキバオーであるが、坂をのぼり切りゴール板が見えた瞬間、鬼の形相のアマゴワクチンが意地で差し返す。カスケードは脱落したかついてこれない。

マキバオーはアマゴワクチンを差し返す脚は残っていないか。騎手の山本管助はマキバオーの体を思い、ムチを自らの足に入れなんとか奮起を促す。マキバオーは「響いてくる・・・響いてくるのね管助くんの足を伝わって・・・なんて痛い・・・なんて重い・・・そしてなんて熱いムチ・・・このままじゃ・・・このままじゃ負けられないのね~~~~~~!!!」と最後の力を振り絞りアマゴワクチンを追う。しかし・・・・・・。

なんと先頭でゴールしたのは脱落したはずのカスケード。内ラチのギリギリを通って残り10mで見事に差し切り、2着のアマゴワクチンに2馬身差をつけての圧勝だった。脱落したかに見えたカスケードはゴール直前の残り50m、あごをグッと引き、頭が地面につくほどの極端な前傾姿勢で一気に加速。驚異の末脚を見せ付けたのだった。

負けたマキバオーは悔しさを抑えきれずに号泣。チュウ兵衛や管助、調教師の飯富昌虎も完敗を認めざるを得ないカスケードの完勝劇だった。それはアマゴワクチンも同様で、今後は三冠よりもカスケード越えを目標にすると宣言するほど。

「みんなの期待を裏切ってしまったのね・・・」と涙にくれるマキバオーに近寄る黒い影。朝日杯3歳ステークスを圧勝した“黒い殺し屋”カスケードだ。

「そうでもないようだぜ。少なくとも・・・このオレの期待には応えた走りだった・・・お前もまさかこれで終わるつもりじゃあるまい。そんな所でしょげて寝てる場合か!? もっと強くなってこい! 次の皐月賞、今度は期待して待っててやるぜ!! 裏切るんじゃねえぞ・・・」

とマキバオーにエールを贈ったのだった。マキバオーはすぐに気を持ち直し、皐月賞でのリベンジのためさらなる進化を胸に誓ったのだった。後に最強世代といわれるカスケード、アマゴワクチン、ミドリマキバオーが初対決した朝日杯3歳ステークスこそ、伝説の名勝負と呼ぶのにふさわしい。

参照:BSマンガ夜話「みどりのマキバオー」

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