山中慎介、強い! 難敵を下してV7

2014.10.23

カテゴリー:格闘技の話題

WBC世界バンタム級タイトルマッチ、山中慎介vsスリヤン・ソールンビサイ(タイ)をテレビ観戦。大方の予想では山中選手があっさりKO防衛するのではと思われていたけれど、スリヤンは元世界王者という肩書どおりかなりの実力者だった。

初回から中盤まで、王者はスリヤンの頭を下げて打ち込む大振りの右に手こずっていた。スリヤンはオーソドックスにも関わらず、セオリー外の右から始まる攻撃をメインに組み立て、山中選手の左の強打を巧みに潰していた。

スリヤンの右は変則的であり、パンチの出処がわかりにくく、山中選手は何発も被弾してしまった。ただし、変則的ゆえ腕の力が拳に乗り切らず、グローブの芯で捉えられていないせいか、被弾数の割にはダメージは少ない様子だった。

それにタイ人だけあって、互いに身体を密着させたクリンチ際の攻防に強く、効くパンチはなくてもうるさいパンチを執拗に振るっていた。

ディフェンス面に関しては特別秀でた印象は残らなかったけど、顎を引き額を突き出すクラウチング姿勢を徹底することで、山中選手自慢の左ストレートを幾度も硬い額で受け止めており、明らかに拳へのダメージも計算しているように見えた。

4Rまでの判定は0-1でスリヤン優勢、個人的な見立てでは0-3でスリヤンだったかなと。

しかし、まあ、スリヤンがよかったのは序盤だけであり、山中選手は想像以上の強さだったわけなのだ。

山中選手は序盤の攻防こそスリヤンに譲ったものの、一発一発が大砲である利き腕の右ジャブと、スリヤンの飛び込みに合わせたボディフックを的確に決め、簡単に突っ込ませなくしたのはさすが。

そして右アッパーで頭をかち上げ、左ストレートで奪ったダウンは、今年見たボクシングのダウンシーンでもっとも美しいものだった。あれだけ左を当てたのにKOできなかったのは、単にスリヤンが丈夫だったから。こればっかりは仕方がない。

さらに目を見張ったのはディフェンス面。まずはクリンチ際の攻防。両腕でスリヤンの頭を抱き込むことで、分の悪い際の攻撃を完璧に防いでみせた。

タイ人選手はクリンチ際の攻防がうまい選手が多く、きちんと対策をしないといいようにやられてしまうケースもある。ムエタイでは当たり前の技術とはいえ、山中選手に抜かりはなかった。

クリンチ際の攻撃を狙っていたスリヤンは距離を潰されて頭にきたのか、ついムエタイの崩しをしてしまい反則の減点を取られてしまった。この時点で勝負あり。

そしてもうひとつ、頭を下げて突っ込んでくる相手に対して、バッティングをほとんど受けないディフェンス力にも驚かされた。

バッティングはもちろん反則なのだけれど、ボクシングでは往々にして「当てちまえ」と頭も武器にしている選手が多い(日本人でいえば亀田興毅が代表的)。

バッティングを受ければ、顔が腫れるか切れるかするし、鼻血も出やすくなる。やっぱり大きなダメージとなる。そして、山中選手のように、姿勢の良い選手は特にバッティングの餌食になりやすいもの。

しかし、頭の位置を巧みにズラし、グローブでのストッピングも駆使してバッティングを防いでみせた。もしかしたら、被弾したパンチの数発は、バッティングを受けないために泣く泣くもらってしまったものもあるかもしれない。とはいえ、試合後の顔を見れば、それも最小限のダメージで流していたことがわかる。

やっぱり山中選手は段違いに強い。しかも試合内容も素晴らしい。統一戦がなんとしても見たいのだ。


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