戦後がまたひとつ終わった、ゾウのはな子の死
2016.05.29
カテゴリー:ただの日記
タイ王国から1949年に贈られた、メス象のはな子が2016年5月26日に老衰で死去。69年の生涯に幕を閉じた。
はな子が贈られた当時の日本は、敗戦のドン底で孤立化し、このまま日本はなくなるかもしれないと、無謀な戦争を戦ってしまったという悔恨に押し潰されそうになっていた時期。
ちょっと歴史を説明すれば、太平洋戦争(大東亜戦争)時、タイ王国と日本は同盟関係にあって共に連合国軍と戦った仲。しかし、日本が敗戦するとタイは「日本に強制されたため戦争に参加せざるを得なかった」という声明を発し、まあ、日本からしたら裏切られた形となった。
しかしそれは仕方のない事で、タイとて植民地化の脅威にさらされていたわけだから、軍事的にアジア最強だった日本という後ろ盾を失えば、米英仏から侵略を受けかねない状況になる。
そういう声明を発っしてまでも、なんとか乗り切ろうとしたわけだ。
そんなタイと日本が平和条約を結んだのは1952年、はな子は正式な国交のなかった時代に贈られたのだから、タイからお詫びが込められた友好の印ということ。
日本人もそれがわかったからはな子はずっと愛され続け、死亡の報に接し涙する方々が印象的だった。コンクリートに閉じ込められてかわいそうだというもっともな批判はあったけれど、しかし日本人のはな子への愛は変わらないものがあったと思う。
さて、はな子が死んだ翌日、アメリカのオバマ大統領が広島を訪れ、原爆を使用した国の代表として一定のケジメをつけた。
戦争という呪縛はまだ日本を苦しめているものの、はな子がもたらしてくれた明るさと、オバマの示した誠実さは同じように日本人の心を癒やしてくれたと思う。
はな子の死もオバマ大統領の広島訪問も、戦後生まれの自分だけれど泣けた。