超新星・田中恒成がOPBFミニマム級チャンピオンに

2014.11.02

カテゴリー:格闘技の話題

2014年10月30日で行われたOPBFミニマム級チャンピオンシップ、王者・原隆二vs挑戦者・田中恒成。結果は10回TKOで田中恒成が原隆二を下し、弱冠19歳の若い王者が誕生した。

まず驚かされたのは田中恒成の体つき。19歳とはとても思えない鍛え込まれた素晴らしい上半身であった。19歳、たった4戦でOPBFタイトルに挑戦するのだから天才であることは間違いないけど、単に天才であることに胡座をかかずに相当な努力を積んでいる証拠。

試合が始まれば、さすがに王者・原隆二のテクニックが光った。ガンガン前に出て田中の打ち際を潰し、得意な接近戦で細かいパンチを効果的に叩き込んだ。特に左のボディーブローが的確に決まり、明らかに田中はダメージを受け、腹に意識がいくあまりに顔にパンチをもらってしまった。

それに原隆二はディフェンスにも優れたものがあり、田中のジャブとストレートを巧みなウェービングでかわし、ブロッキングに頼らずに構築されたディフェンステクニックは素晴らしかった。さすがにボクシング主要4団体の世界ランキング前半にランキングされるだけのことはあった。

一方の田中は、ジャブとストレートを中心に組み立てる、基本に忠実なボクシングを展開。試合前半に披露したハンドスピードはおそらく世界最速レベルのそれであり、度肝を抜かされた。

パンチはそれほど多彩ではなかったけれど、鋭いジャブが二連打三連打され、原隆二の前進を止めてみせ、スピードと破壊力が両立された強烈な右ストレートで効果的にダメージを与えていた。

5回に決めた右クロスが事実上の決定打。テクニック差を勝負度胸で埋めてみせ、原隆二を上回っているスピードで相打ちのタイミングで先にパンチを当ててみせた。

結局、原隆二は最後までこのダメージが抜けず、結果、9回にもらった右アッパーでジ・エンド。10回のレフェリーストップは素晴らしいタイミングだったと思う。

解説の川島郭志さんご指摘のとおり、田中はディフェンス面や、打ち気になると足が止まってしまうといった改善すべきウイークポイントがあるけれど、逆に言えばウイークポイントがあるにもかかわらずこの強さは本物。世界王者になることは確実だし、ウイークポイントが改善されれば複数階級制覇も夢でもなんでもない。

田中は何よりも勝負度胸がいい。19歳とは思えない体つきであることは前述したけれど、かてて加えて面構えも19歳とは思えないふてぶてしさがある。チャラチャラしていないし、強さにしか興味がない様子。強い心があるから、自身の才能をリングで大いに発揮できている。

それでいて謙虚さも忘れておらず、自身の応援団だけではなく、対戦者の原隆二、その原の応援団にも感謝の意を表したことには感動すら覚えた。素晴らしいボクサーであり、スポーツマンだ。

ただ一点苦言を呈するなら、応援団の方々に対して。原隆二のコール時に盛大な「恒成!」コールはマナー違反。野球で言えば、中日の攻撃中に巨人の応援団がラッパを鳴らすようなもの。

熱い男たちが集まり盛り上がってしまっただけで悪気がないことはわかるから、次戦以降は控えてもらいたい。とはいえ、あれだけ熱狂的に応援してくれたら選手も心強いはず。試合が盛り上がったのは彼らの力も大きい。

原隆二vs田中恒成は素晴らしい試合だった。田中は間違いなく世界王者になる逸材であるし、負けた原隆二の今後の試合にも注目していきたい。


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